応力テンソルの導入
大学の物理で出てくる応力という力。新しく出てきた上に,それがテンソルと言われてもピンとこないですが,図的に捉えるとしっくりくると思います。
ポイントは行列と同じく,添え字が2つあるということです。それぞれが\(x,y,z\)になり得るので成分は9つあり,3×3行列で表現できます。\[ \sigma = \begin \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \\ \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \\ \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \end \] ではそれぞれの添え字は何を表しているのでしょうか。
まず1つめは力が作用する面を表しています。例えば\( \sigma_, \sigma_, \sigma_\)の3つは1つめの添え字が\(x\)ですが,これは\(x\)軸の方向を向く面に作用していることを表しています。図を見るとわかりやすいですが,この3つが作用している面は手前を向いている面,つまり\(x\)軸方向を向いている(\(x\)軸に垂直な)面ですね。他の軸も同様に考えることがでいます。
次に2つめは力の向きを表しています。例えば\( \sigma_, \sigma_, \sigma_\)の3つは2つめの添え字が\(z\)ですが,図上で全て\(z\)軸方向を向いた矢印(力)として表されています。普通の力と異なり,力の方向が同じでも作用する面が異なると違う成分としてカウントされるのが応力の特徴です。
応力テンソルの対称性と主応力
さて,先ほどは応力を行列の形で表現しましたが,より一般化して応力は2階テンソルであると考えます。要は添え字2つを指定すれば値が定まるもの,ぐらいの理解で大丈夫です。
このテンソルは9つの成分を持ちますが,独立な成分は6つだけです。それはこれが対称テンソル(添え字を交換しても値が不変)だからで\[ \sigma_ = \sigma_, \quad \sigma_ = \sigma_, \quad \sigma_ = \sigma_ \]が成立します。この添え字がお互いに異なる成分(行列における非対角成分)をせん断応力と呼びます。
実はこのせん断応力はうまく応力テンソルを変形してやることで消すことができます。応力は(いわゆる普通の)力と同じく,座標系と無関係に存在するものですから,座標系ごとに成分は異なるはずです。例えば一番上の図で,\(\vec = (F_x, F_y, F_z)\)と分けて考えましたが,それこそ\(\vec\)の方向と\(x\)軸が一致するように座標系を取ってしまえば,\(x\)成分しか持たない力に見えたはずです。
応力でも同じことができます。適当な座標を取ってやることで,せん断応力をゼロにすることができます。数学的操作としては,応力テンソルを表す行列を対角化することに対応します。\[ \begin \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \\ \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \\ \sigma_ & \sigma_ & \sigma_ \end \to \begin \sigma’_ & 0 & 0 \\ 0 & \sigma’_ & 0 \\ 0 & 0 & \sigma’_ \end \]このように対角化して出てきた成分を主応力と呼びます。こうすることで応力場のエッセンスを捉えることができます。
偏差応力について
最後に偏差応力について紹介しておきます。応力\(\sigma\)に対してその偏差応力を\(\sigma_d\)と書くと,次のように定義されます。\[\sigma_d = \sigma+pI\]ここで\(I\)は単位行列で\[p=-\dfrac+\sigma_+\sigma_>\]です。この\(p\)は静水圧と呼ばれ,応力の体格成分(垂直応力)の平均値です。この偏差応力は,応力に等方的でない成分が入っている場合ゼロでなくなります。逆にいうと,応力が完全に等方的なら偏差応力は存在しません。覚えておくといいですね。
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