怒れる獣は恐ろしい!罠の『止め刺し』保定・拘束技術の基本
怒れる獣は恐ろしい!罠の『止め刺し』保定・拘束技術の基本

怒れる獣は恐ろしい!罠の『止め刺し』保定・拘束技術の基本

急所は、心臓もしくは心臓に近い血管です。前脚の付け根あたりに勢いよく刃先を刺し込み、素早く抜いて心臓や血管を切断しましょう。上手く急所を突けていたら、傷口から脈動と共に血が流れ出てきます。もし血が流れなくても、呼吸が徐々に荒くなっていれば致命傷を与えているので、しばらく様子をみましょう。

くくりわなにかかったイノシシは、手あたり次第に地面を掘り返す癖を持っており、このとき出来た掘り返しの跡は「土俵」と呼ばれます。この土俵は、言うなればイノシシの移動可能距離なので、その外側であれば反撃を受ける心配はありません。しかし土俵の大きさがいびつだったり、獲物が土俵から出ている場合は、ワイヤーが緩んでいたり、根付け(リードを結んだ木)が折れそうになっている、などのトラブルが隠れている可能性があります。原因は何なのか、注意深く観察をしてください。

ワイヤーが絡まっている場合は、その状態を確認 箱わなの場合は溶接の状態を確認 接近するルートを確認する 獲物の動きを封じる

リスクアセスメントが完了したら、いよいよ止め刺しに入る・・・のですが、その前に獲物の動きを封じる方法を考えましょう。獲物の動きを封じる方法には拘束と昏倒の2種類があります。拘束にはさらに水平方向への拘束と垂直方向への拘束があり、昏倒には主に打撃による方法と電気ショックによる方法があります。

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水平拘束

水平拘束は2本のワイヤーやロープを使って獲物を左右に引っ張って動きを封じる方法です。くくりわなでは1本の足がスネアで固定されているため、ワイヤーと一直線になるようにロープで固定します。ロープの結び方(ロープワーク)には色々ありますが、基本的には獲物側にハングマンズノット、固定する側はトラッカーズヒッチを使います。

引っ張ると絞まる『ハングマンズノット』

獲物側に作るハングマンズノットは“絞首刑”に使われるロープワークで、手元を引っ張ると輪を絞めることができます。さらに、一度締まった輪は簡単には緩まないので、獲物が暴れてもほどける心配がありません。

輪を体に通す方法 アニマルスネアを使う

水平拘束にはアニマルスネアを使用する方法もあります。これは普通のくくりわなに棒を取り付けた形状をしており、踏板の部分で獲物の鼻ツラを叩くことで締め付けます。

1人で150㎏以上の力を出せる『トラッカーズヒッチ』

獲物にロープを結んだら逆側を引っ張って獲物を固定しますが、このとき“綱引き”をしても人間の力ではなかなか野生動物には勝てません。そこで獲物を引っ張るときは、トラッカーズヒッチというロープワークを使います。 このトラッカーズヒッチは3倍力システムと呼ばれ、動滑車・定滑車の原理より1人の力(約50㎏)で3人分の力(約150㎏)で獲物を引っ張ることができます。

ワイヤーにフックを掛けて水平拘束する

垂直拘束

獲物を左右から引っ張って動きを封じる水平拘束に対して、ワイヤーやロープで吊り上げる方法は垂直拘束と呼ばれます。箱わなでは天井からワイヤーを入れて、獲物の首や上あごをくくるようにします。

くくりわなのワイヤーを吊り上げて転ばせる

くくりわなで拘束用ロープが頭や足にかけられない場合は、リードにロープをかけて高い位置に固定し、スネアがくくりついた足を掬い上げる方法が効果的です。この方法だと四つ足動物は仰向けに転んで動けなくなります。

殴打による昏倒

獲物の動きを封じる方法で一般的なのが、棍棒などで獲物の頭部を殴打する昏倒です。くくりわなにかかったイノシシは突進してくるため、ワイヤーが伸び切って動きが止まった瞬間を狙って殴打します。

殴打するのは脳天か後側頭部 覚醒する場合もあるので注意 棍棒の長さは人の丈~2m

殴打に使う棒は、山に転がっている適当な枝では丈夫さがまったく足りないので、あらかじめ鉄棒や樫などの固い素材の棒を用意しておきましょう。 棍棒の長さや重さは人により様々ですが、できるだけ獲物へ接近しなくても良いように、人の丈~2m程度の長さがオススメです。重さは、重ければ重いほど打ち下ろしたときの衝撃が増しますが、操作性は悪くなります。もし棒を加工できる工具があるのなら、野球のバットのように重心を先端に集めるように削ることで、操作性が向上します。

ブルックリンスマッシャー (87.5cmモデル)

電気ショックによる昏倒

電気ショックは、電極を獲物に刺し込んで電気を流し、感電により獲物の動きを封じる方法です。電気ショックは電流を流し続けると心臓を停止させることができますが、それだけだと運搬中に蘇生する可能性があります。よって電気ショックを使った後は必ず急所を刺して失血死させましょう。

電気ショッカーの仕組み

電気ショッカー(電殺器)は、先を尖らせた電極棒を持ち手の棒にくくりつけて、バッテリー(主にバイク用・DC12V、6A)と昇圧器(主にAC100V、定格300W)、ON/OFFスイッチを直列に繋いで出来ています。 電気ショッカーは自作できますが、電極部分の加工が難しいことと、棒と電極の接合部に強度が必要なので、罠専門メーカーのキットを使うのがオススメです。

電気ショッカーを使うさいの注意点

電気ショッカーは扱い方を一歩間違えれば自分が感電してしまうほど危険性の高い道具です。そのため電気ショッカーを使うさいは、必ず絶縁性の手袋ゴム長靴を着用しましょう。また漏電を防ぐために雨の日は使用してはいけません。

箱わなでの使用方法 くくりわなに使用する方法

刃物による止め刺し

刺す場所

急所は、心臓もしくは心臓に近い血管です。前脚の付け根あたりに勢いよく刃先を刺し込み、素早く抜いて心臓や血管を切断しましょう。 上手く急所を突けていたら、傷口から脈動と共に血が流れ出てきます。もし血が流れなくても、呼吸が徐々に荒くなっていれば致命傷を与えているので、しばらく様子をみましょう。

止め刺し用ナイフ 土佐剣鉈 4寸(120 ㎜) ハンターの間で人気が高い土佐打刃物。実用性重視のフォルムが逆にカッコいい。ただ、4寸は短いかなぁ~…。止め刺しには6寸あった方が個人的には安心。何かもっと良いアイテムがあったら差し替えます。 ナイフをヤリ状にして使用する

箱わなで檻の目からナイフを刺し込みにくい場合は、ナイフに柄を付けてヤリ状にして使用することもあります。特に袋ナガサと呼ばれるタイプは、中空になっている柄に棒を差して使用できるため、多くのハンターが愛用しています。

ナイフを棒にくくり付けてヤリ状にする場合は、まずハングマンズノットで柄の先を固定し、クローブヒッチを繰り返して締めこんでいきます。最後にナイフと棒の間にロープを巻き付けて固定すると、ガッチリ固めることができます。

モーラナイフ (ステンレス) 槍を使うときの補足

法律上「やり」と呼ばれる道具は、銃刀法により警察署への届け出が必要になります。しかしナイフを取り付けただけの道具は「やり」では無いため、届け出の必要はありません。また、鋼鉄の角棒の先端を尖らせた槍も、刃渡りが5.5㎝未満であれば杭(パイル)なので、届け出の必要ありません。 ただし、これらの道具を狩猟以外の目的で携帯・運搬していた場合は、銃刀法違反に抵触します。止め刺し用道具は車に積みっぱなしにせず、狩猟時以外は必ず自宅で保管しましょう。

銃による止め刺し

銃による止め刺しは獲物に接近する必要がないため、最も安全性の高い方法とされています。しかし、流れ弾や跳弾といったリスクはあるため、使用するさいは必ず周囲を確認しましょう。

銃を使用する際の条件
  1. 罠にかかった鳥獣の動きを確実に固定できない場合であること。
  2. 罠にかかった鳥獣が獰猛で、捕獲等をする者の生命・身体に危害を及ぼす恐れがあること。
  3. 罠を仕掛けた狩猟者等の同意にもとづき行われること。
  4. 銃器の使用にあたっての安全性が確保されていること。
  5. 狩猟の場合は、銃による止め刺しを行う地区で銃猟の狩猟者登録を受けていること。有害鳥獣駆除等である場合は、銃器による捕獲許可や認定を受けていること。
  6. 狩猟の場合は、止め刺しを行う場所が特定猟具使用禁止区域(銃禁エリア)でないこと。
銃で狙うポイント

罠の止め刺しでは、眉間を狙うと額の骨で弾がそれて跳弾になる危険性があるので、横を向いたタイミングで目の後ろ指2本分ぐらいの位置を狙います。箱わなで使用するさいは、銃口を檻に乗せて照準を安定させて発砲しましょう。

窒息による止め刺し

タヌキやアライグマといった小型箱わなでは、窒息による止め刺しが行われます。一般的には箱わなごと水に沈めて溺死させる方法が取られますが、水場が使用できない場合は、首をくくった垂直拘束から負荷をかけて絞殺する方法が取られます。

窒息させる時間

窒息させる時間は短すぎると息を吹き返す可能性があるので、最低でも5分間は漬けておきましょう。一見残酷な止め刺しのように思えますが、窒息は失神するまでの時間が短いため、比較的負荷が小さい方法とされています。

まとめ

  1. 罠にかかった獲物の状態・周囲の状況は千差万別。まずはリスクの確認と対策を考える
  2. 止め刺しに入る前に、ロープやワイヤーで獲物を拘束、または殴打や電気ショックで獲物を昏倒させて、動きを封じる
  3. 止め刺しの方法は大きく、ナイフ等による失血死、銃殺、または窒息死