不動態皮膜の正体とは?-鉄筋を腐食から守る酸化膜
不動態皮膜の正体とは?-鉄筋を腐食から守る酸化膜

不動態皮膜の正体とは?-鉄筋を腐食から守る酸化膜

コンクリート内部で鉄筋を腐食から守っている不動態皮膜。これの化学式や特徴、消失の原因などについて解説していきます。

硫酸中に鉄Fe試片を浸漬し,これを陽極として働かせると,電極電位が高くなるにつれて金属の溶解が盛んになり,電流密度は増加する。しかし,ある電極電位に達すると,電流密度は急激に減少して,Feの溶解がほとんど止まった状態になる。これと類似の現象はFe以外にもニッケルNi,コバルトCo,クロムCrなどにも観測される。これは金属の表面にきわめて薄い不溶性かつ絶縁性の薄膜(多くは酸化物,または水酸化物)が生成したためと考えられ,この状態を不働態,生成したと考えられる薄膜を不働態皮膜と呼ぶ。

-世界大百科事典 第2版より

しかし、例えば鉄をより酸性の強い濃硝酸に漬けてみると、 鉄の表面には急激に酸化が進行して反応しなくなった緻密な膜 ができ、それ以上鉄の腐食が進行することはなくなります。

鉄筋の不動態皮膜

これは、 コンクリートが強アルカリ性である ためです。種類にもよりますが、コンクリートのpHは12~13程度で、鉄筋の不動態皮膜ができるのに十分な強アルカリであると言えます。

この不動態皮膜の厚さは20~60Å(”オングストローム”=10 -10 m)と非常に薄いのですが、非常に緻密な被膜で、外部との電子のやり取りをシャットアウトし、鉄筋の腐食を防いでいます。

不動態皮膜は複数の酸化物の膜で形成されているという説もありますが、不動態皮膜の主成分は γ-Fe3O4・nH2O という水和酸化物と言われており、自然界で発生することは稀であると考えられています。

不動態皮膜の消失

それは、何らかの原因で不動態皮膜が消失してしまうからです。その原因として挙げられるのが、 反応性の高い陰イオンの作用アルカリ性の消失 です。

陰イオンの作用

不動態皮膜は、塩化物イオンなどのハロゲンイオン(Cl – 、Br – 、I – )、硫酸イオン(SO4 2- )、硫化物イオン(S 2- )などが作用すると破壊されやすくなります。

このように不動態皮膜の金属イオンとハロゲンイオンが反応すると、不動態皮膜の一部が破壊され、 その部分をアノードとして鉄筋腐食が発生 していってしまいます。

このように不動態皮膜が破壊される現象として代表的なのは 塩害 ですね。Cl – の作用によて鉄筋腐食が発生しやすい環境が出来上がってしまうんです。

塩分によりコンクリート構造物がダメージを受ける塩害。日本でも発生事例の多い劣化現象なので、その原因やメカニズム、対策等について理解しておきましょう。 アルカリ性の消失

どのようにコンクリートのアルカリ性が弱まることにより鉄筋腐食が発生する劣化機構は 中性化 と呼ばれています。

大気中の二酸化炭素が原因で引き起こされるコンクリートの中性化。そのメカニズムや対策工法などについてまとめました。

不動態「被膜」?or不動態「皮膜」?

明確な定義についてははっきりとしませんが、 基本的には表面にある薄い膜については「皮膜」、金属を包んでいる(被っている)膜という意味では「被膜」 という使い分けがされていると考えられます。

まとめ

  • 鉄筋はコンクリートのアルカリ性によって不動態を生成する
  • 不動態皮膜によって鉄筋は腐食の進行から守られている
  • 不動態皮膜の厚さは20~60Åで、主成分はγ-Fe3O4・nH2O
  • 塩害や中性化により不動態皮膜は破壊される

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コメント

人類の足手まとい より: 不導体の導はみちびくの方の導ではないのでしょうか bomperson より:

ご覧いただきありがとうございます。「不導体」は電気を通さない物質のことですね。 「不動態」(または「不働態」)は、酸化が急激に進むことによって酸化反応がほとんど起きなくなるような状態のことを言います。 この記事では、酸化(≒腐食)が進まなくなった皮膜のこと(不動態皮膜)について述べていますので、「不動態」の漢字で間違いありません。