米最新鋭空母フォードに設備トラブル、艦内トイレが頻繁に使用不能に
米最新鋭空母フォードに設備トラブル、艦内トイレが頻繁に使用不能に

米最新鋭空母フォードに設備トラブル、艦内トイレが頻繁に使用不能に

米海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」(USS Gerald R. Ford, CVN-78)は、その打撃力、高度な自動化、そして電磁カタパルト(EMALS)などの革新技術で世界の注目を集める、130億ドル規模の巨大艦だ。しかし、この世界最強クラスの空母が、運用開始から数年を経てもなお、極めて基礎的な「生活インフラ」、具体的には艦内の真空式汚水処理システム(VCHT:Vacuum Collection, Holding, and Transfer)の度重なる詰まりという、思わぬ問題に直面している。

米海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」(USS Gerald R. Ford, CVN-78)は、その打撃力、高度な自動化、そして電磁カタパルト(EMALS)などの革新技術で世界の注目を集める、130億ドル規模の巨大艦だ。しかし、この世界最強クラスの空母が、運用開始から数年を経てもなお、極めて基礎的な「生活インフラ」、具体的には艦内の真空式汚水処理システム(VCHT:Vacuum Collection, Holding, and Transfer)の度重なる詰まりという、思わぬ問題に直面している。

空母の血管を詰まらせるVCHTシステムの問題点

  1. 節水効果: 1回あたりの使用水量が従来の重力式システムに比べて圧倒的に少ないため、原子力艦といえど有限である生活用水の節約に大きく貢献する。
  2. 設計の自由度: 重力に依存しないため、多層構造の艦内において配管の取り回し自由度が高く、軍艦の設計に不可欠な防水隔壁を前提とした構造にも適応しやすい。

しかし、実運用においては、このシステムの根本的な設計上の弱点が露呈した。

  • 配管径の細さ: 省スペース化を追求した結果、配管径が細く設計されており、異物混入に対する耐性が極めて低い。米政府説明責任局(GAO)や海軍関係者からは、設計段階でこの配管径が実運用の負荷に耐えられない可能性が指摘されていた。
  • 集中利用への脆弱性: 艦内の多数の乗員が一斉に利用する時間帯(特に食事前後やシフト交代時)にはシステムへの負荷が急増し、設計想定を超えた負荷が故障を誘発する可能性が指摘されている。
  • 異物流入: 船の内部資料などでは、Tシャツやロープ、紙タオルといった、本来流してはいけないものが混入し、詰まりを悪化させている記述が頻繁に見られる。これはシステムの設計脆弱性だけでなく、乗員の運用マニュアル遵守意識の徹底にも課題があることを示唆している。
  • 真空ポンプへの高い依存度: システムが真空ポンプに高度に依存しているため、ひとたび系統に不具合が生じると、同一区画内の複数トイレが同時に使用不能となる連鎖的な問題を引き起こす。

士気への影響

  • 修理要員の過重労働と高コスト: 詰まりの修理を担当する技術者(ハル・テクニシャン)は、航海中、応急対応として1日19時間以上の労働を強いられることもあり、その負担は極めて大きいと報告されている。航海中に根本的な修理ができないため、空母が港に停泊した際に酸処理による配管洗浄という大掛かりな整備が必要となる。この洗浄作業は1回あたり約40万ドル(約6,000万円)という莫大な費用がかかる。
  • 乗員の不満と疲労: 故障によりトイレに45分待ちの行列ができることもあり、乗組員の不満や疲労が増大している。米海軍は「作戦能力への直接的影響はない」と強調するが、長期展開下での衛生環境の悪化や乗員の士気低下は、間違いなく戦闘力へ間接的に跳ね返る。空母の実力は、最先端のハードウェアだけでなく、数千人の人間のパフォーマンスによって支えられているからだ。

フォード空母は、通常6〜7ヶ月とされる配備期間を超え、昨年6月の出港からベネズエラ、中東への派遣と、8ヶ月以上に及ぶ異例の長期展開を強いられている。この長期的な運用は、通常の整備や乗員の休養の機会を減少させ、VCHTシステムの問題をさらに悪化させる要因となったと報じられている。

フォード級は、ニミッツ級の後継として、電磁カタパルト(EMALS)、新型アレスティング・ギア(AAG)、そして高度な自動化システムなど、同時多発的に数多くの新技術を導入した「実験艦」的役割を担っている。VCHTの刷新もその一つであった。前級であるニミッツ級空母でも配管トラブルは皆無ではなかったが、長年の実績と比較的シンプルな重力式を基本とした方式が、大規模な運用破綻を防いでいた。フォード級で起きている問題は、まさに革新の代償としての「初期成長痛」と言える。運用の中で見えてきた課題は、次艦以降に反映される構図であり、実際、同型艦のUSS John F. Kennedy (CVN-79)やUSS Enterprise (CVN-80)では、配管設計の修正やシステムの改良が進められているとされる。