乳がんの手術①:乳房切除、センチネルリンパ節などについて解説
乳がんの治療の中心は手術です。乳房切除術は乳房全てを切除します。乳房部分切除術はがんとその周りだけを切除します。手術の方法とそれぞれの特徴を説明します。
乳房部分切除術は乳房切除術と比較して再発率が高いことがわかっています。乳房部分切除術に加えて 放射線治療 を行うことで、局所(がんが元あった場所)の再発率が低下すると考えられています。このため、乳房部分切除術は手術の後に再発予防目的の放射線治療を行うことが前提の治療になります。放射線治療ができない人に対しては、乳房部分切除術はあまりお勧めできません。たとえば放射線治療のときは腕を挙げて腕に放射線が当たらないようにしないといけないので、肩関節が固まってその姿勢がとれない人には行なえません。
- 過去に手術した側の乳房に乳がんが再発した
- 乳房や胸郭へ 放射線療法 を行ったことがある
- 妊娠中
- 強皮症(きょうひしょう)や全身性エリテマトーデスなどの 膠原病 (こうげんびょう)にかかっている
- 温存乳房への放射線療法を行う体位がとれない
乳房部分切除術でがんを切り取った後には、切り取ったものを病理医が顕微鏡(けんびきょう)で観察し、がんを確実に切り取れたかなどを評価します。この検査を 病理検査 といいます。病理検査では多くの点をチェックしますが、がんの切り口(切除断端)の観察が特に重要です。切除断端(せつじょだんたん)にがん細胞が多く残っている場合(切除断端陽性)は、再発の可能性が高いので乳房の切除や放射線治療の追加が検討されます。詳しくは「乳がんの手術後の病理検査とは?」で説明します。
4. リンパ節郭清とは?
リンパ節(リンパせつ)というのは全身にたくさんある小さな器官です。正常なリンパ節は大きさ数mm程度です。乳がんは乳房の近くのリンパ節に 転移 しやすいため、乳がんの手術では周りのリンパ節も一緒に取り除きます。これをリンパ節郭清(かくせい)と言います。
リンパ節転移とは?がんの リンパ節転移 は、がん細胞がリンパ液に乗って流れていくことで始まります。がんが広がっていくときにリンパ管を破壊してリンパ管の中にがん細胞が入ります。がんがリンパ管に入り込むことをリンパ管侵襲(しんしゅう)と言います。がんはリンパ管を通ってリンパ節に到達します。リンパ節はいわば体内リンパ網の関所の役目を担当しています。がん細胞がリンパ液に乗って流れるとリンパ節で食い止められます。がん細胞がリンパ節に定着して増殖している状態がリンパ節転移です。
リンパ節転移は、がんが遠く離れた場所まで移動して増殖する 遠隔転移 (えんかくてんい)とは性質が違います。遠隔転移があるときには治療法がかなり限定されますが、リンパ節転移があっても遠隔転移がなければ比較的多くの治療法が残されています。
リンパ節転移をどうやって取り除くのか?- レベルI:小胸筋より外側のリンパ節
- レベルII:小胸筋の裏側のリンパ節
- レベルlll:小胸筋より内側のリンパ節
- 最上部:鎖骨下リンパ節
5. センチネルリンパ節生検とは?
リンパ節郭清の必要性を判断するために、センチネルリンパ節 生検 (せいけん)という検査を行うことがあります。生検とは、ここでは1個から数個のリンパ節だけを取り出して顕微鏡で調べることです。
腋窩リンパ節に手術前から転移が指摘されていれば、腋窩リンパ節郭清を行います。しかし、腋窩リンパ節郭清を行うと腕の 浮腫 (ふしゅ; むくみ )などの 合併症 (がっぺいしょう)が発生する可能性が増加します。リンパ節郭清の合併症は生活に影響を及ぼします。
- 色素注入法(しきそちゅうにゅうほう)
- アイソトープ 法
手術の前日から5時間前に、がんの周りに放射性 同位元素 (ほうしゃせいどういげんそ)を注射します。そして、手術の開始前にガンマプローブという機械を腋窩皮膚に当ててセンチネルリンパ節を探します。
病理診断 腋窩リンパ節郭清を行わなくていい場合は? 評価 マクロ転移 マイクロ転移 ITC 転移の大きさ 2mmを超える 2mm以下 個々の細胞のみ(細胞の大きさは0.2mm程度) センチネルリンパ節以外のリンパ節に転移している確率 約40-50% 約20% 約10%※ITC(isolated tumor cell):遊離 腫瘍 細胞(ゆうりしゅようさいぼう)
センチネルリンパ節の転移がITC転移であった場合はリンパ節郭清を省略します。センチネルリンパ節転移がマイクロ転移であった場合、腋窩リンパ節郭清を省略することもあります。これは、センチネルリンパ節転移がマイクロ転移であった場合、腋窩リンパ節郭清を省略しても生存率には影響しないことが臨床研究により明らかになっているためです。腋窩リンパ節に小さな転移を残しているのに生存率が変わらない理由は、その後に行われる 抗がん剤治療 や放射線治療による効果が大きいためだと考えられています。ただし、手術中の迅速病理診断においては、マイクロ転移と確定診断が困難な場合もあり、この際の腋窩リンパ節郭清の省略に関しては、施設によって判断が異なります。
6. 乳がんで手術できないのはどんなとき?
もう1つはまれなケースですが、遠隔転移のない状態で発見されたものの、乳房の中でがんが進行していて、手術ではがんを取り切れない可能性がある場合です。このときにはまず手術前に抗がん剤治療を行い、がんを小さくしてから切除を行います。しかし 抗がん剤 でがんが小さくならないときには手術を行うことはできません。
7. 転移があったら手術はしない?
乳がんと診断されたときに、すでに乳房から離れた場所に転移(遠隔転移)があった場合は、 ステージ IV(4)に分類されます。ステージIVでは、基本的に乳房切除術などの局所に対する手術を行うことはありません。その理由は、遠隔転移があればすでに全身にがん細胞があると考えて全身をカバーできる抗がん剤治療を行う方が理にかなっていると考えられるからです。
しかし、転移がある状況でも手術を考慮することがあります。乳がんが進行したことで痛みがひどい場合や、がんが 壊死 (えし)して不快な臭いを伴う場合などです。このように局所(乳房)での進行が見られるときは、手術によって症状が減り、生活の質が上がると考えられます。手術の他には放射線療法なども対策として考えられますが、手術のほうが効果があると考えられる場合は手術を行います。
8. 予防的乳房切除とは?
乳がんの一部は遺伝が原因です。BRCA1もしくはBRCA2といった遺伝子(breast cancer susceptibility gene)に特定の変異をもつ人は乳がんが発生する危険性が高いことが分かっています。
BRCA1、BRCA2の遺伝子変異は遺伝により受け継がれることがあります。このように遺伝が強く関わる乳がんを遺伝性乳がんといいます。遺伝子変異がある人は、ない人に比べて遺伝性乳がんが 発症 する危険性が高いので、乳がんを発症する前に乳房を切除して乳がんの発生を予防するという考えがあります。この手術を予防的乳房切除と言います。
- 乳がんを発症したことで遺伝子変異が発見され、乳がんをまだ発症していない側の乳房に対して予防的乳房切除を行う
- 遺伝子変異が見つかっていて乳がんを発症してはいない人が、両側の乳房に対して予防的乳房切除を行う
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