山村暮鳥 「ランプ」「夜の詩」(詩集『風は草木にささやいた』より)
ランプ野中にさみしい一けん家あたりはもう薄暗くつめたくはるかに遠くぽつちりとランプをつけたぽつちりと點じたランプああ何といふ眞實なことだこれだこれだこれは人間をまじめにするわたしは一本の枯木のやうだ一本の枯木のやうにこの烈風の中につつ立つて
野中にさみしい一けん家 あたりはもう薄暗く つめたく はるかに遠く ぽつちりとランプをつけた ぽつちりと點じたランプ ああ 何といふ眞實なことだ これだ これだ これは人間をまじめにする わたしは一本の枯木のやうだ 一本の枯木のやうにこの烈風の中につつ立つて ランプにむかへば 自 おのづか ら合さる手と手 其處にも人間がすんでゐるのだ ああ何もかもくるしみからくる ともすれば此の風で ランプはきえさうになる そうすると 私もランプと消えさうになる かうして力を一つにしながら ランプも私もおたがひに獨りぼつちだ
夜の詩あかんぼを寢かしつける 子守唄 やはらかく細くかなしく それを歌つてゐる自分も ほんとに 何時 いつ かあかんぼとなり ランプも火鉢も 急須も茶碗も ぼんぼん時計も睡くなる
作者と作品について
山村 暮鳥(やまむら ぼちょう) 1884年(明治17年)~1924年(大正13年) 群馬県生まれ
暮鳥の作品というと、詩集『雲』にあるいくつかの詩や、「風景 純銀もざいく」などが有名かもしれませんが、『風は草木にささやいた』のなかにも、素晴らしいものは沢山あります。 この詩集は、力強い人間らしさを感じます。
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萩原朔太郎 「竹」(詩集『月に吠える』より)竹 ますぐなるもの地面に生え、 するどき青きもの地面に生え、 凍れる冬をつらぬきて、 そのみどり葉光る朝の空路に、 なみだたれ、 なみだをたれ、 いまはや懺悔をはれる肩の上より、 けぶれる竹の根はひろごり、 するどき青.
宮沢賢治 「永訣の朝」(『心象スケッチ 春と修羅』より)永訣の朝 けふのうちに とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ (*あめゆじゆとてちてけんじや) うすあかくいつそう陰惨(いんざん)な雲から みぞれはびちよびちよふつてくる .
山村暮鳥 「雪ふり蟲」「初冬の詩」「路上所見」「大風の詩」「風の方向がかはつた」(詩集『風は草木にささやいた』より)雪ふり蟲 いちはやく こどもはみつけた とんでゐる雪ふり蟲を 而も私はまだ 一つのことを考へてゐる 初冬の詩 そろそろ都會がうつくしくなる そして人間の目が險しくなる 初冬 いまにお前の手は熱く まるで火のやうにな.
立原道造 「のちのおもひに」(詩集『萱草に寄す』より)のちのおもひに 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に 水引草に風が立ち 草ひばりのうたひやまない しづまりかへつた午さがりの林道を うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた ――そして私は 見て来たものを .
八木重吉 「冬」「冬日」「霜」「お化け」「梅」(詩集『秋の瞳』『貧しき信徒』より)冬 木に眼めが生なって人を見ている 冬 悲しく投げやりな気持でいると ものに驚かない 冬をうつくしいとだけおもっている 冬日ふゆび 冬の日はうすいけれど 明るく 涙も出なくなってしまった私をいたわってくれる .