高齢者の筋力トレーニング負荷設定チェックポイント(強度・期間・頻度)とディトレーニング
高齢者の筋力トレーニング負荷設定チェックポイント(強度・期間・頻度)とディトレーニング

高齢者の筋力トレーニング負荷設定チェックポイント(強度・期間・頻度)とディトレーニング

高齢者を対象に筋力トレーニングをすることはリハビリでは日常的にあると思います。 しかし、トレーニングの負荷設定で疑問に思うことはないでしょうか。 どのくらいの強度で運動したらよいの? 強度はどうやって判断したらよいの? 週に何回くらい運動し

本邦では傷害発生や血圧上昇の予防あるいはコンプライアンスなどの点を考慮して、高齢者に対しては運動強度を60%1RM以下程度とした低強度の筋力トレーニングが処方されることが多い。

しかし、高齢者に対する低強度筋力トレーニングの有効性を示す報告は限られているのが現状であり、ガイドラインも存在しなかった。

池添冬芽.理学療法ガイドライン第2版ー地域理学療法ガイドラインを中心にー.地域理学療法学.2022. 【運動強度】高齢者の筋力トレーニング強度を推定する方法【反復回数】と【ボルグスケール】 yamanopt.com 低強度の筋力トレーニングの有効性
  • 1RM強度は高強度の方が有意に高い (効果量0.58, p=0.002)
  • 筋力は有意差なし (効果量0.16, p=0.19)
  • 筋肥大は有意差なし (効果量0.03, p=0.56)

注意点として、 低強度トレーニングでは運動回数や時間が必要であり、効率が悪い です。

筋力トレーニングに最適な期間:50~53週で最も効果が高い

トレーニング期間によって筋力向上の機序が異なる

開始初期は 神経系の向上 により筋力が増加しますが、筋肥大は生じません。

中枢神経系の興奮閾値の低下(運動単位の種類と総数の変化 / α運動神経の発火頻度向上)

②末梢神経での運動単位数の増加による収縮する筋線維数の増加

筋力に対する神経系の向上は、 トレーニング開始から2週間程度 とする報告が多いようです。6)

  • トレーニング20週までは神経系の向上が続き、30週でプラトーに達した
  • 筋肥大は少なくとも最初の10週は起こらないが、それ以降は筋力と並行して向上した
  • トレーニング後20日を過ぎると筋断面積が増加4)
  • トレーニング開始10週以降から向上した7)
  • トレーニング開始8~12週で筋肥大を認めた6)9)10)

筋肥大に関する期間はバラバラですが、 およそ2~12週の長期的なトレーニング を必要とします。

現段階では、 筋肥大の効果はトレーニング開始8~12週以上の長期トレーニングが必要 と結論づけている研究が多いようです。

最適なトレーニング期間

トレーニング期間が長い(52週以上)とトレーニング効果が高い

  • トレーニング期間は筋力の向上と有意な関係がある
  • 8~52週間のトレーニング期間では、トレーニング期間が長い方が筋力向上の効果が高い

筋力と筋肉量は、トレーニング期間50~53週が最も効果的であった(筋力SMD2.34、筋肉量SMD0.59)

トレーニングの期間が 最長 ( 5 0 ~ 5 3 週)で 、最も効果が得られやすい ことが示唆されています。

トレーニング期間が最長50~53週間で筋力の最大増加を認めた(平均SMDbs=2.34、4研究)。ただし、6~9週間の短い期間のレジスタンストレーニングでも筋力は向上(平均SMDbs=2.27、2研究)しており、効果量の差はわずかであった。

Ron Borde, et al. Dose-Response Relationships of Resistance Training in Healthy Old Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2015.

つまり、 筋力に関して6~9週間の期間でも十分な効果が得られる と明らかになりました。

筋力トレーニングに最適な頻度:週2~3回で最も効果が高い

筋力トレーニングの頻度は週2~3回

アメリカのスポーツ医学会(ACMS)においても、 筋力トレーニングは週2~3回 を推奨しています。1)

  • 筋力向上には週2回の頻度が最も効果が高かった(SMD2.13)
  • 筋肥大には週3回の頻度が最も効果が高あった(SMD0.38)

高齢者において 筋力トレーニングの頻度は、週2~3回が高い効果量 であることが示されている。

この調査のポイントは、 低頻度(週3回)群と高頻度(週6回)群 を同じ負荷量になるように調整している点です。

  • トレーニング後、低頻度(週3回)群と高頻度(週6回)群はともに筋力が有意に向上した
  • 筋力向上の変化量は、低頻度群と高頻度群で有意な差は認めなかった

トレーニング量と強度が同等である場合、週6回のトレーニングは週3回を超えてメリットが得られるわけではない。

Ryan J Colquhoun, et al. Training Volume, Not Frequency, Indicative of Maximal Strength Adaptations to Resistance Training. J Strength Cond Res. 2018.

負荷量が同じ場合の低頻度と高頻度のトレーニングは、 どちらも筋力向上に有効であり、頻度による差はない ことを示しています。

  • 低頻度(週1回):平均効果量ES 0.71 (95%CI 0.56~0.86)
  • 高頻度(週3回以上):平均効果量ES 0.78 (95%CI 0.60~0.96)
  • 低頻度と高頻度で効果量は統計的な差は認めなかった(p=0.025)

総負荷量とは、 強度・回数・セット数・頻度によって設定された負荷量 です。

特に、運動経験が少ない人や虚弱高齢者では高い負荷の運動が難しいため、 頻度を増やすことで総負荷量を上げる選択 もあります。

【筋力トレーニング】運動頻度の影響と週1回のトレーニング効果【1週間のトレーニング頻度】 yamanopt.com

高齢者のディトレーニング効果:12週間トレーニングを止めると効果がなくなる可能性

トレーニングの減少や中止によりトレーニングで誘発された解剖学的、生理学的なパフォーマンスの適応が部分的または完全に失われること

もしくは、トレーニングをやめている期間。

Mujika I, et al. Detraining: loss of training-induced physiological and performance adaptations. Part I: short term insufficient training stimulus. Sports Med. 2000.

簡単にいうと、 トレーニングを止めた後の能力低下 のことです。

  • パフォーマンス向上は、ディトレーニング12週間程度でなくなる可能性がある
  • 筋肉量はディトレーニング12~24週間で統計的に有意な減少はないが、31~52週で有意に減少する
  • 12週間の筋力トレーニングにより筋力(1RM)は有意に増加したが、12週間のディトレーニングで有意に減少した
  • 12週間のディトレーニング後も、増加した筋力は部分的に残存していた
  • 再トレーニングによる筋力増加の速度は、トレーニング開始時よりも速かった

最初に筋力トレーニングを実施したときよりも 早い段階で筋力の向上 を認めました。

  • 対照群(トレーニングなし)と比べ、12週間のSTとPTによりSPPBは有意に向上した
  • 12週間のディトレーニングにより、ST群・PT群は対照群と比べSPPBスコアに有意差はなかった
  • PTはディトレーニング後もSPPBスコアが維持される傾向は認めた(統計的な有意差はなし)

この調査から、 12週間のディトレーニングによってパフォーマンスの向上効果は損なわれる可能性 を示しています。

考察でも、 筋力トレーニングよりもパワートレーンングの方が長期間トレーニング効果を得られるため有益な可能性 があると述べられています。

【筋パワー】筋力トレーニングとの効果比較と負荷設定 yamanopt.com

筋力やパフォーマンス に関しては、 12週程度(およそ3~4ヶ月)で”トレーニング効果が減少”もしくは”完全に損なわれる” ようです。

  • ベースラインと比較して、筋サイズはレジスタンストレーニング後に有意に増加した(コーエンd 0.99, 95%CI 0.63~1.36、p