偏微分方程式とその力学系、関数解析の入門記事まとめ
偏微分方程式とその力学系、関数解析の入門記事まとめ これに対し、 アトラクター
これに対し、アトラクター(attractor)は初期値の空間全体の挙動を捉えようとする大域的な話となります。ローレンツアトラクターは一般に知名度があり、予測不可能性やカオスの話の引き合いに出されますが、まずアトラクターの意味と重要性を知ることは大事です。つまり、微分方程式を理論的に解くのが難しく、個別の解の挙動が予想し難いとしても、およそ限られた範囲に引き込まれとどまっていくことがわかるのがアトラクターの話です。
アトラクターの理論は、まず常微分方程式のケースから学ぶと良いでしょう。しかしそのアイデアは、抽象力学系を通して偏微分方程式でも利用できます。熱方程式を含むような偏微分方程式の分類:反応拡散方程式におけるアトラクターの存在が示せます。
常微分方程式の力学系 偏微分方程式の力学系偏微分方程式の基礎、関数空間
偏微分方程式の教科書には、大ざっぱに言えば、関数空間を使わない古典的なアプローチと、関数空間を使った関数解析的なアプローチがあります。ここで紹介するのは後者の入門です。
関数空間の典型例が、連続関数のなす空間\(C^k\)、可積分関数のなす空間\(L^p\)、ソボレフ空間\(W^\)です。
しかし一般的な偏微分方程式では、解の表示式を得るのは難しいです。そこで部分的な問題として、まず解は一意に存在するのかといった基礎的な問題(存在と一意性)を対処しようとするわけです。
\(C^k\)は解の構成、収束について都合が悪いことがあり(完備性がない)、\(L^p\)や\(W^\)といったより広い関数空間が必要になります。積分可能な関数だけでは微分の議論ができないため、微分を少し弱めた弱微分、弱形式のアイデアが必要となります。
アトラクターの構成においては、関数空間におけるコンパクト集合が必要となりますが、\(H^1\)の有界集合は\(L^2\)におけるコンパクト集合となる:レシッヒ・コンドラショフの定理のような埋め込み定理は重要です。
ルベーグ積分、L^p空間 ソボレフ空間関数解析
関数解析(functional analysis)は、関数空間と、その要素である関数の対応:作用素や汎関数に関する理論です。主に線形代数がその土台となっています。
常微分方程式の力学系と偏微分方程式の力学系では、相空間はユークリッド空間と関数空間ですが、後者には特有の扱いにくさがあります。まずわかりやすい違いとして、前者は有限次元、後者は無限次元(有限次元でない)があります。
無限次元の場合では「基底」の意味を工夫し、代数的な基底(有限個の線形結合)だけでなく、線形結合の極限として表せる意味での基底:完全正規直交系を考えます。フーリエ級数展開は、関数空間の基底の例です。
それでも偏微分方程式の解の存在と一意性を示したり、アトラクターのようなコンパクトな集合を構成するためには、関数空間のノルム(位相)の関係や線形作用素の理論を使いこなす必要があります。
線形作用素は行列の一般化であり、その例である積分作用素や微分作用素は微分方程式と関係してきます。連立方程式\(Ax=b\)を行列として\(x=A^b\)と解いたように、偏微分方程式を作用素\(F\)によって\(F(u)=v\)と表し、\(v=F^(u)\)と解けないか考えるわけです。
特にコンパクト作用素は、有限次元の場合の行列の一般化として良い性質を持ちます。対称な行列の固有値は実数で対角化可能という線形代数の結果は、ヒルベルト・シュミットの定理として一般化されます。
ここでの一連の記事は、関数解析と偏微分方程式の関連、特にラプラシアンの固有値・固有関数の性質を明らかにします。これは「すべての関数は三角関数の和として表せるか?」というフーリエの問題の正当化と回答、一般化です。また、「ラプラシアンが逆作用素を持つか」という問題は「ポアソン方程式が一意な解を持つか」という問題と等価です。さらに、ラプラシアンの固有値・固有関数は、ポアソン方程式だけでなく、反応拡散方程式などの時間発展する偏微分方程式の解の構成の基礎にもなっています。
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