50年の時を経て生まれ変わった『エマニュエル』、オードレイ・ディヴァン監督が描きたかった「エロティシズム」とは?
1974年に公開されたシルビア・クリステル主演の映画『エマニエル夫人』は世に衝撃を与え、ひとつの社会現象となった。観客動員数はフランス本国だけで900万人、世界で4500万人、そしてパリのとある映画館では10年間連続上映された。しかし半世紀が経ち、性の規範は変容した。男…
なかでもオードレイ・ディヴァンは、わずか2作でフランス映画界をリードする存在となった。『Mais Vous Êtes Fous』(原題、2019年)では嘘や依存症に苦悩するカップルを描いた。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『あのこと』(21年、アニー・エルノー原作)では、妊娠によってのっぴきならない状況に陥った女学生を通じ、既成概念と闘う自由でたくましい女性像を表現した。そんな監督の新作が『エマニュエル』だ。往年のヒット作『エマニエル夫人』の蠱惑的なアイコンに魅了されたディヴァン。今作『エマニュエル』の主人公は、もはや欲望もオーガズムも感じないファムファタールだ。
主人公エマニュエル(ノエミ・メルラン)と、彼女を挑発するようなビジネスマン、ケイ・シノハラ(ウィル・シャープ)。「ノエミは、出会ってすぐに映画の核心を理解してくれました。それは枯渇した欲望や快楽を取り戻す意味であり、人間の知性や魅力、絶対的な真理です」とディヴァンはメルランとの出会いを振り返る。ディヴァンはこれまでにヴァレリー・ドンゼッリ監督の『L'Amour et les Forêts』(原題、23年)の脚本を担当し、夫の精神的な支配を受けて地獄を味わう女性の姿を描いてセザール賞を受賞した。さらにジル・ルルーシュ監督の『L'Amour Ouf』(原題、24年)では家庭環境の違う同級生ふたりの運命的な恋を描いた脚本を共同で担当した。
「エロティシズムをベッドシーンの羅列で終わらせたくなかった」
――主人公を通して「エロティシズムとは何か」を考えたのですか?
映画の舞台になったのは、全てか管理され衛生的で快適に見える香港の五つ星ホテルと、そこから解放されたかのような雑多な市街地。夜の香港を、エマニュエルとシノハラは徘徊する。――それが「欲望の不在」ということでしょうか?
私たちが生きる社会は貪欲です。賢く立ち回り、楽しく生きて、素敵な自分を演出しなくてはならない。これを逆手に取り、快楽も欲望も感じない主人公を通じてさまざまな問いを投げかけました。この社会で女性として生きるとはどういうことか? 成果主義の圧力とどう向き合うべきか? イメージや過剰なコミュニケーションに支配された私たちは、どのように快楽と向き合えばいいのか? 徹底して管理された状況を出発点に、他者の視線の偏在を牢獄のように感じていた主人公が徐々に自分の弱さを受け入れ、完璧主義を捨てた時にどう感じるかを描きました。
――欲望や快楽をスクリーンでどう表現するのでしょう?
「長い間、女性の身体は観客の欲望の対象として撮られてきた」
――ノエミ・メルランとはどのように撮影を進めましたか?
完璧に管理されたホテルから、香港の街へ飛び出すエマニュエル。グリーンのセクシーなカラーグレーディングが異国情緒を醸し出す。――性的なシーンでは、インティマシーコーディネーターも活躍したのでしょうか?
――あなたのこれまでの3作で描かれた女性は皆、切羽詰まって逃げ場を求めているように見えます。
――女性を主題にした映画は多いですが、ある種の商業的なご都合主義に陥っている作品も多いように感じます。
Audrey Diwan/1980年、フランス生まれ。パリ政治学院でジャーナリズムと政治学を学んだ後、ファッション誌やカルチャー誌の記者を経て、2008年から脚本家として活躍。19年、『Mais Vous Êtes Fous』(原題)で監督デビューを果たす。そして、ノーベル文学賞を受賞したフランスを代表する作家アニー・エルノーの小説『事件』を自ら脚色した監督第2作『あのこと』(21年)で、ベネチア国際映画祭金獅子賞、ルミエール賞作品賞を受賞。
『エマニュエル』●監督・共同脚本/オードレイ・ディヴァン●原案/『エマニエル夫人』 エマニエル・アルサン著 ●出演/ノエミ・メルラン、ウィル・シャープ、ジェイミー・キャンベル・バウアー、チャチャ・ホアン、アンソニー・ウォン、ナオミ・ワッツ ほか ●2024年、フランス映画●105分 ●R15+●配給/ギャガ●2025年1月10日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開。 © 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS https://gaga.ne.jp/emmanuelle/公式X:@emmanuelle_2025
text: Marilyne Letertre(madame.lefigaro.fr) photography: Matias Indjic hair: Bénédicte Cazeau make up: Elisabeth Doucet
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