萩原朔太郎 「中學の校庭」(詩集『純情小曲集』より)
中學の校庭われの中學にありたる日は 艶なまめく情熱になやみたり いかりて書物をなげすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに青きを飛びさり 天日てんじつ直射して熱く帽子に照りぬ。
作者と作品について
- 作者
萩原 朔太郎(はぎわら さくたろう) 1886年(明治19年)~1942年(昭和17年) 群馬県生まれ
- 作品
「中學の校庭」は、詩集『純情小曲集』にある詩です。 この詩集は二部構成になっていて、前半は「愛憐詩篇」という初期作品集、後半は「郷土望景詩」といって、郷土・前橋について詠われた詩で編まれています。 「中學の校庭」は、「郷土望景詩」の冒頭に置かれています。
帽子の庇に、日光が反射して輝いているのが、目に見えるような作品ですね。 「青き」というのも、青空と、無限の青を感じさせて、象徴的です。
ところで詩集のなかで、前橋中學について、朔太郎はこんな風に書いています。
昔は校庭に夏草茂り、四つ葉くろばあのいちめんに生えたれども、今は野球の練習はげしく、庭みな白く固みて炎天に輝やけり。われの如き怠惰の生徒ら、今も猶そこにありやなしや。
これを読んで、中学校の校庭って、今も昔も変わらないんだな……と思いました。 野球部が一生懸命練習しているのも、気だるそうな生徒がいるのも、なんだか懐かしい情景です。