古墳を歩けば、古代史がわかる!6世紀~7世紀中頃・前方後円墳から方墳へ
古墳を歩けば、古代史がわかる!6世紀~7世紀中頃・前方後円墳から方墳へ 2026/1/3「ヤマト政権が“国家”へ変わりゆく過程です」
藤原京の道で墳丘が削られる前方後円墳|五条野丸山古墳
国の史跡(宮内庁治定部分を除く)、前方後円墳、6世紀後半。全長約320m、周囲に掘られた堀を含めると全長約420mにもおよぶ。前方部の北西隅と北東隅が削られており、藤原京を整備したときに削られた可能性が高い。写真/首藤光一・アフロ奈良盆地の東南に位置する飛鳥地方(※現在の明日香村と、周辺市町[橿原市・桜井市・高取町]の一部。)には、大きさや形もさまざまな古墳が多数残っている。この地で1400年ほど前、政治的リーダーを務めた大王(おおきみ・天皇)ら有力者たちの墓が古墳である。
「飛鳥地方の古墳の形の変化から日本の国家の成り立ちが見えてきます」と話すのは考古学を専門とする相原嘉之さんだ。
相原さんがまず案内するのが五条野丸山古墳。飛鳥地方では珍しい前方後円墳で、全国6位の規模を誇る。これだけ大きな古墳に葬られたのはどんな人物なのか。
「欽明天皇(509~571)か、同時代の有力豪族の蘇我稲目(そがのいなめ) という説が有力です。古墳が大きいから天皇陵なのか、あるいは蘇我氏が天皇を凌ぐ力をもっていたとも考えられます」(相原さん、以下同)
五条野丸山古墳橿原市五条野町・大軽町入場:後円部の陵墓参考地の指定箇所以外は見学自由交通:近鉄線岡寺駅から徒歩約5分
方墳|石舞台古墳
巨石30個を用いた蘇我馬子の「家族墓」 国の特別史跡、方墳、7世紀初頭。石室の全長は約20.5m、玄室(遺骸を安置した部屋)は高さ約4.8m、幅約3.5m、奥行き約7.7m。天井石のひとつは約77トンにもおよび、使用された石材全体の重量は約2300トンにも達する。石室を覆っていた土は失われ、石室が露出した状態となった。蘇我稲目の子で、聖徳太子(厩戸王)と政治を動かした男が蘇我馬子だ。その墓とされるのが石舞台古墳である。巨石が露出した石室は、前方後円墳ではなく、四角い形をした方墳(ほうふん)に造られた。
「前方後円墳はヤマト政権の一員であることを示すための古墳の形でした。一方で、蘇我馬子が権力を握った6世紀後半頃、中国や朝鮮半島では方墳が上層階級の墳墓として採用されていました。蘇我氏は、方墳を造ることで日本が東アジアの国際社会の一員であることを示したのでしょう」
石舞台古墳の石室は、ひとりを葬るには大きすぎる。相原さんが巨大な石を撫でながらこう話す。
「これは横穴式石室で、あとから追加で埋葬できるタイプです。馬子の家族墓だったのでしょう」
石舞台古墳の墳丘は一辺約50mの方墳であり、周囲には最大幅約8.4mの周濠と、幅約7mの外堤が存在することが判明した。写真/上田安彦・アフロ 石舞台古墳高市郡明日香村島庄電話:0744・54・3240開場時間:9時~17時(最終入場は16時45分まで)入場料:300円閉場日:無休交通:近鉄線橿原神宮前駅東口または飛鳥駅から、奈良交通明日香周遊バスで石舞台下車すぐ
方墳|菖蒲池古墳
ふたつの石棺は蘇我蝦夷・入鹿のものか 国の史跡、方墳、7世紀中頃。平成22年の発掘調査によって一辺約30m、二段築成の方墳であることがわかった。それ以前は、墳形や規模などは不明だった。石室に竜山石(現・兵庫県高砂市で産出)を刳り抜いた家形石棺が縦一列に2基納められている。蘇我氏の滅亡を語る古墳
石舞台古墳に続いて相原さんが案内するのが菖蒲池古墳だ。柵越しに、屋根の形をしたふたつの家形石棺(いえがたせつかん)が並んでいるのが見える。
「これが蘇我蝦夷(えみし)と入鹿の石棺である可能性が指摘されています」
蘇我馬子の跡を継いで権勢をふるったのが蝦夷と入鹿の親子だ。しかし栄華は続かず、645年の乙巳(いつし)の変で入鹿は殺され、蝦夷は自殺した。相原さんが続ける。
「この近くに小山田古墳という方墳があるのですが、造られて10年ほどで壊されているのです。蝦夷が自分の墓として造ったものの、乙巳の変ののちに壊され、この菖蒲池古墳に蝦夷と入鹿がまとめて葬られたとも考えられます」
窮屈そうなふたつの石棺は歴史の非情を無言で語っている。
菖蒲池古墳橿原市菖蒲町見学自由交通:近鉄線岡寺駅から徒歩約20分
案内人 相原嘉之さん(奈良大学教授・58歳)昭和42年、大阪府生まれ。奈良大学文学部文化財学科卒業。奈良国立文化財研究所、滋賀県文化財保護協会、明日香村教育委員会文化財課課長などを経て現職。近著に『飛鳥・藤原京と古代国家形成』。
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取材・文/藪内成基 写真/奥田高文
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