. シリンジポンプの使用方法
シリンジポンプの使用方法
シリンジポンプの使用方法

シリンジポンプの使用方法

シリンジポンプの使用方法 2025 1/12 目次

シリンジポンプとは?

シリンジポンプとは、シリンジ(注射器)を用いて薬剤を一定速度で投与するための医療機器のこと。

流量は0.1ml/h単位で設定可能で、輸液ポンプよりさらに少量の薬剤を精密に投与管理できる。

シリンジポンプの適応

  1. 少量の薬剤を正確かつ持続的に投与したい場合
    • カテコラミン
    • 昇圧薬
    • 強心薬
    • 降圧剤
    • 血管拡張薬
    • 麻薬性鎮痛薬(例:モルヒネ)
    • インスリン製剤
    • 抗凝固薬
  2. 特定の治療法
    • 化学療法(抗がん剤の持続投与)
    • 輸血や免疫グロブリンの投与
  3. 輸液の流量を厳重に管理したい場合
    • 新生児・乳幼児の輸液

何ml/h以下でシリンジポンプを使う?輸液ポンプは10ml/h以下の場合、誤差が大きくなる可能性があるため、一般的に、10ml/h以下の速度で投与する場合にシリンジポンプを使用することが多い。

シリンジポンプの構造と名称

例:テルフュージョンシリンジポンプ35型※機種により構造は異なる
  • クランプ引き上げて左に90度回すと、シリンジをセットできる。シリンジをセット後、クランプを戻してシリンジを固定する。
  • スリットシリンジのフランジを挿入する。
  • スライダーフックシリンジの押し子を挟んで固定する。
  • スライダー開始すると、シリンジの押し子を押して薬液を注入する。
  • クラッチ押すとスライダーフックが開き、シリンジをセットできる。
  • 設定ダイアル回して数値が変更する。
  • 動作インジケータ動作状態を色と点灯パターンでお知らせ。緑の回転点灯→動作正常 消灯→停止赤の点滅または点灯→アラームによる停止中緑と赤の交互点滅→スタンバイモード
  • 流量表示画面小数点以下と色が異なる。
  • 液晶表示画面残量、積算量、シリンジメーカー、シリンジサイズ、アラームなどが表示される。
  • 電源ボタン

シリンジポンプの使用方法

必要物品
  • シリンジポンプ
  • ロック式シリンジ(30ml、50ml)

圧をかけたときに外れないようにするためにロック式を使用する。

  • ロック式延長チューブ

内径1.0㎜程の細い延長チューブを使用する。理由は、チューブ内の薬液容量が少なくて済み、プライミング時の薬液使用量を減らせるため。また、内径が狭いことで流速が安定しやすく、投与速度の変動を最小限に抑えることができる。

  • 薬液
  • 点滴スタンド
  • 酒精綿
  • 手袋
開始時手順
  1. 必要物品を準備する。
  2. 薬剤をロック式シリンジに充填し、気泡を抜く。
  3. ロック式延長チューブに接続し、薬液を先端まで満たす。
  4. シリンジポンプを点滴スタンドに設置する。

シリンジポンプは必ずベッドの高さに合わせて設置する!!これは、シリンジポンプの停止時や固定不良が発生した場合に、高低差で薬液が患者の体内に大量に流れ込むリスクがあるためである。この現象を「サイフォニング現象」と呼び、発生すると患者に重大な影響を及ぼす可能性がある。だから、セット時だけではなく、ラウンド毎のチェックも大事!

  1. 電源コードをシリンジポンプとコンセントに接続する。
  2. 電源を入れる。
  3. 機器の動作チェック完了を待つ。
  4. シリンジをシリンジポンプにセットする。
    • クランプを引き上げ、左に90度回す。
    • スリットにシリンジのフランジをしっかりとはめる。
    • クランプを戻してシリンジを固定する。
    • クラッチをつまみながらスライダーフックでシリンジの押し子を挟む。

押し子の固定不良は、サイフォニング現象を引き起こすため、シリンジの固定は確実に行う!

  1. 早送りボタンを押して、延長チューブの先端まで薬液を満たす(プラミング)。

シリンジを固定した時に、押し子とスライダーの間に、目に見えない隙間があるので、それを埋めるために重要な手順!これをしないと開始してもしばらく薬液が注入されない!

  1. ダイアルを回して1時間当たりの流量(ml/h)を設定する。
  2. 流量を再確認する。

1.0mL/hとすることろを誤って10mL/hと設定して救命処置が必要となったアクシデント事例あり!高リスク薬剤は、ダブルチェックを徹底する!

  1. 投与ラインの先端を消毒し、輸液ルートに接続する。
  2. 静脈ラインの刺入部までの輸液ルートに間違いがないか確認する。
    • クレンメが開いている
    • 三方活栓が開いていいるか
    • 刺入部に異常はないか
  3. 開始前に【8R】を確認する。

投薬時の<8R>おさらい正しい患者:フルネームと生年月日で答えてもらう。ネームバンドで確認する。正しい薬剤:薬剤名が正しいか?類似薬剤もあるのでしっかり確認!正しい容量:希釈の指示はないか?濃度に間違いがないか?正しい投与経路:シリンジポンプは皮下注で使用することもあるので投与経路が指示通りか確認。正しい時間:日付、時間に間違いはないか?正しい目的:患者にも投与目的を適切に説明する。正しい記録:受け持ち時の流量や残量、流量変更時も正確に記録する。正しい反応:バイタルや副作用を観察する。

  1. 開始ボタンを押す。
  2. 定期的に確認を行う。投与中も定期的にラインの状態やシリンジの状態を確認する。

ラウンド毎に、残量をマーキングを行い、流量通り減っているかを確認することも多い。

シリンジ交換時の手順
  1. 薬剤をロック式シリンジに充填し、気泡を抜く。
    • 延長チューブに接続し、薬液を先端まで満たす。
  2. 三括やクレンメでルートをロックする。
  3. シリンジポンプを一時停止する。
  4. クランプを引き上げクランプを外す
  5. クラッチをつまみながらスライダーフックを外す。
  6. シリンジを慎重に引き抜く。
  7. 薬液を充填したシリンジをシリンジポンプにセットする。
    • クランプを引き上げ、左に90度回す。
    • スリットにシリンジのフランジをしっかりとはめる。
    • クランプを戻してシリンジを固定する。
    • クラッチをつまみながらスライダーフックでシリンジの押し子をが挟む。
  8. プライミングを行う
    • 早送りボタンを押して延長チューブの先端まで薬液が満たされるまでエア抜きを行う。
    • チューブ内の気泡が完全に除去されたことを確認する
  9. 延長チューブの先端を消毒し、輸液ルートに接続する。
  10. クランプを解除する。
    • 三方活栓やクレンメが適切に調整されていることを確認する。
  11. 設定の確認し、運転再開する。
    • 投与速度(mL/h)、投与量(総量)の設定を確認し、間違いがないことを確認する
    • 必要でれば積算量をクリアする。
  12. シリンジポンプが正常に動作しているか、流量表示を確認する。
  13. 接続部から薬液の漏れがないことを確認する。

各種アラームとその対応

1. 閉塞アラーム

原因

  • チューブや注射器の閉塞
  • 針やカテーテルの位置異常
  • 患者の体位による圧迫

対応方法

  1. チューブの屈曲や圧迫がないか、クランプが開いているか確認する。
  2. シリンジが正しくセットされているか確認する。
  3. カテーテルの先端位置が正しいかエコーやレントゲンで確認する。
  4. 血栓や沈殿物がある場合はルート交換する。
2. 空気混入アラーム

原因

  • 薬液に気泡が混入
  • シリンジの装着不良

対応方法

  1. チューブ内を確認し、気泡があれば取り除く。
    • 気泡を押し出すか、無気泡の薬液を準備し直す。
  2. シリンジが正しく装着されているか確認する。
  3. シリンジポンプのセンサー部の清掃・調整を行う(必要に応じて)。
3. 薬液残量低下アラーム

原因

  • 薬液が予定より早く減少
  • シリンジ容量の設定ミス

対応方法

  1. 薬液の残量を確認し、不足している場合は補充する。
  2. 次回の薬液準備時に、正しい容量をセットするよう確認する。
  3. 投与速度が適切か確認し、処方内容と照合する。
4. バッテリー低下アラーム

原因

  • バッテリーの充電不足

対応方法

  1. 速やかにAC電源に接続する。
  2. 電源ケーブルやコンセントの状態を確認し、接続に問題がないか確認する。
  3. バッテリーの定期的な充電・保守を行う。
5. 流量異常アラーム

原因

  • 設定した流量が維持できない状況(閉塞、チューブの損傷、注射器の不良など)

対応方法

  1. 投与設定の内容(流量、投与速度)を確認する。
  2. シリンジやチューブの状態を再確認し、異常があれば交換する。
  3. カテーテルや患者の状態を確認し、必要に応じて医師に報告する。
6. シリンジ装着エラーアラーム

原因

  • シリンジが正しく装着されていない
  • 対応する規格外のシリンジを使用

対応方法

  1. シリンジが規格に適合しているか確認する。
  2. 装着の位置や固定状態を再調整する。
  3. 再度エラーが発生する場合は、装置の故障を疑い、メーカーや技師に連絡する。
7. システムエラーアラーム

原因

  • 装置内部の不具合やセンサーの誤動作

対応方法

  1. 装置を再起動する(可能であれば)。
  2. 装置の表示メッセージを確認し、取扱説明書に従って対応する。
  3. 解決できない場合は代替機を使用し、メーカーまたは技師に修理を依頼する。
8. その他のアラーム
  • 温度異常アラーム:装置が適切な温度環境で動作していない場合。
    • 対応:装置を適切な温度環境(推奨20~25℃)に移動する。
  • 操作ミスアラーム:設定や操作に誤りがある場合。
    • 対応:設定を見直し、処方箋や操作手順を確認する。
★注意点
  • アラーム解除後、設定内容や患者の状態を必ず再確認する。
  • 繰り返しアラームが発生する場合は装置の故障を疑い、MEなど専門スタッフに相談する。

シリンジポンプのインシデント・アクシデント事例

シリンジポンプに関連するインシデント・アクシデントは、医療現場で比較的頻繁に発生しており、これらは患者の予後に大きく影響を及ぼす可能性がある。

いくつかのインシデント・アクシデント事例に学び、重大なアクシデントを防いでいこう。

投与速度設定のミス

患者に昇圧薬(例: ノルアドレナリン)を投与する際、シリンジポンプの投与速度を「1.0mL/h」とするところを誤って「10.0mL/h」と設定。患者の血圧が急激に上昇し、救命措置が必要になった。(2017年報告)

原因

  • 医療スタッフの操作ミス。
  • 投与速度の確認不足。

対策

  • 設定後のダブルチェックを徹底。
  • 高リスク薬剤では複数スタッフによる確認を義務付け。
残液量の確認漏れによる投与中断

麻薬(フェンタニル)の持続注入中、シリンジ内の薬液が切れて投与が中断。患者に疼痛が発生し、緊急対応が必要となった。(2018年報告)

原因:

  • シリンジ交換のタイミングを見逃した。
  • アラームの設定ミスや無視。

対策:

  • シリンジ交換のスケジュールを明確化。
  • アラーム音量や作動確認の定期的なチェック。
不適切な薬剤の混入

ICUで複数患者のシリンジを準備する際、異なる患者の薬剤を間違えてシリンジポンプに装着し、投与。急激な血圧低下が発生し緊急対応が必要となった。(2019年報告)

原因:

  • ラベルの確認不足。
  • 薬剤準備時の手順の混乱。

対策:

  • 薬剤準備時のラベル確認を徹底。
  • 患者ごとのトレーやカートを分けて管理。
シリンジ固定不良による急速投与

ICUでシリンジポンプを使用して鎮静薬を持続投与していたが、固定フックにシリンジがしっかりとセットされていなかったため、押し子が動いて薬剤が急速に投与。これにより、患者の意識レベルが急激に低下し、人工呼吸器の設定を変更する必要が生じた。(2019年報告)

原因:

  • 機器の操作手順の理解不足。
  • 固定部の不具合または点検不足
  • 機器の点検を徹底し、固定が確実であることを確認する。

対策

  • 機器の点検を徹底し、固定が確実であることを確認する。

参考文献

  1. 日本臨床工学技士会「医療機器安全管理の手引き」2023年版
  2. 厚生労働省「医療機器安全使用のための指針」
  3. 医療安全推進機構「シリンジポンプの使用時における安全対策」
  4. 日本医療機能評価機構 「医療事故情報収集等事業報告書」

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