. 草彅剛が悟りと執着のあいだで 心の“無”を見つめる旅に出る―― 舞台『シッダールタ』への挑戦
草彅剛が悟りと執着のあいだで 心の“無”を見つめる旅に出る―― 舞台『シッダールタ』への挑戦
草彅剛が悟りと執着のあいだで 心の“無”を見つめる旅に出る―― 舞台『シッダールタ』への挑戦

草彅剛が悟りと執着のあいだで 心の“無”を見つめる旅に出る―― 舞台『シッダールタ』への挑戦

2025-10-25 T JAPAN編集部 @ T JAPAN web ENTERTAINMENTインタビュー・対談舞台・ミュージカル・バレエ草彅剛シッダールタ ヘルマン・ヘッセの原作をもとに、草彅剛が挑む新たな舞台『シッダールタ』が11月より上演される。悟りや執着といった普遍のテーマを、白井晃演出のもと現代を映す舞台として立ち上げる。自我を探求し思索を深める主人公の人生を体現する草彅の言葉に、深い余韻が残る。 FacebookLINE

BY JUNKO HORIE, PHOTOGRAPHS BY KAZUYA TOMITA

――実在する宗教家で仏陀(釈迦と言われる仏教の始祖ブッダ)と同じ名を持つ青年シッダールタと、“現代を生きるひとりの男”の二役を演じる草彅さん。

草彅 剛(以下、草彅) 劇作家の長田(育恵)さんが書かれた台本なんです。

――原作はノーベル文学賞受賞作家であるドイツの作家ヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』。演出は世田谷パブリックシアター芸術監督の白井晃さん。

草彅 人生のヒントになるような言葉が台詞となって散りばめられている……そんな本だと思いました。シッダールタとブッダの対峙のシーンとかね、名言だらけなんですよ。「それはあなた自身に起きたことだから、教えることなんてできないだろう」みたいな。ああ、なるほどな、と思いましたね。またブッダに向かって、シッダールタは「あなたの弟子になってしまうと、自我が膨らんでそこに執着してしまう」というようなことを言うんです。確かに、人ってそういうところあるよな!って。だって、誰にとっても心の拠りどころがあったりするわけで。 ほかにも、杉野(遥亮)くんが演じるゴーヴィンダがシッダールタと離れたくないって言う場面で、それは“執着だよ”って言うシッダールタが僕は好きですね。

――演出の白井さんについて、草彅さんのターニングポイントにはいつも白井さんがいたと、コメントされていましたね。

草彅 新しい地図を始めて、初めてお仕事をいただいたのが白井さん演出の舞台でした。信頼しかない、そんな方です。僕が仕事を楽しんでやっていられるのは、僕は基本、遊んでいるんですよ。稽古でも何でも。白井さんはそんな僕の目の前に、神のように仏陀のように降り立ってくれて。わかりやすい言葉で説明してくれて、僕が知らない世界を見せてくれる方。『バリーターク』でご一緒したときも難しい台本だったんですけど、僕の目線になって、わかりやすく嚙み砕いてくれた。僕の中にあるものを引き出してくれましたね。白井さんは、僕の本質的なものを見抜いているのかもしれないですね。

――白井さんは、最高の遊び場を提供してくださっているんですね。

草彅 遊んでいるというか、実は僕は何も考えてないんですよ(笑)。演じるとき……怒るときも泣くときも、ちょっとジーンズのことを考えてるくらいがちょうどいい。だってね、人が泣くときにずーっと悲しいことだけを考えているって、嘘だと思うんですよね。ふと、昨日食べたものなんかが頭をよぎる瞬間もあると思う。

――それが、リアルかもしれないですね。

草彅 そんなものだと思いますよ。出演者それぞれが自分の役とどれだけ遊べるか……白井さんと共演者の皆さんと高め合っていけたらいいなと。舞台の面白いところって、一期一会ということなので。同じ瞬間は絶対に二度と無いですよね。その瞬間、その瞬間、その一期一会をどれだけ深く焼き付けられるか、そういうところなんじゃないかな。

――舞台に立つ醍醐味はどう感じていらっしゃいますか?

草彅 白井さんとの舞台は特に挑戦だと思っています。今回の『シッダールタ』は壮大なテーマだけど、形あるものにしてお見せしないとならない。それには相当なエネルギーが必要になりますけど、立ち向かっていくのが怖い自分と、それ以上に楽しみでもある自分がいて。それが自分の生きがいでもあるんです。

――この舞台を見たあと、観客として自分に刺さった台詞を誰かと語りたくなったり。もしくは、自分ひとりでその言葉と向き合いたくなったり。どっちの自分になるか、語り合いたくなる相手は誰か、今から楽しみです。

草彅 僕はね、『シッダールタ』を観終わったあとには……何も無い。それこそ“無”の境地になってくれてもいいよなぁって思うんです。この物語って、最初から答えは出ているといえば出ているわけですよ。何度も同じことを聞いたり、それぞれに引っかかる台詞があったり。だけど、最後には“何も無い”。それって、究極だと思うんですよね。

――ああ、なるほど。『シッダールタ』で濃厚な人生哲学を浴びたからこそ、最終的に“無”を手に入れる。

草彅 そういうことでいいんじゃないかと思うんだよなぁ、僕は。

――いい大人になって気づいたんですが、理屈で語ることができるものって、大して好きじゃないなって。なぜ好きか説明つかないものほど、強いと。草彅さんのおっしゃる最後に残るのは“無”というのは、それに近いのかもしれません。

草彅 いいね、それ。そういう作品になってくれたらいいですよね。

――最近、プライベートでの草彅さんは、何かに執着されていますか?

草彅 麻辣湯かな。麻辣湯が好きで、結構ずっと食べてますね。自分の中で辛いものブームがきていて、大辛のスープで食べるのが好き。でも辛くてなかなか食べられなくて(笑)、一杯食べるのにだいたい40分ぐらいかかってます。

――大辛というのは、かなり辛いスープに?

草彅 辛さMAXまでいくのは無理なんだけど、辛さ増し料金を払うくらいの辛さにはしてます(笑)。それを「辛い、辛い!」ってヒーヒー言いながら食べる……それが今年の夏の僕のトレンドでしたね。このトレンドこのまま秋、冬へと続くと思いますよ。

――具材にこだわりは?

草彅 基本、野菜全般。肉は麻辣湯には入れないで。食べたければ肉は別に焼いて食べます。

ジャケット・シャツ・パンツ・ネクタイ/ポール・スチュアート ポール・スチュアート青山本店 TEL. 03-6384-5763

――秋冬と言えば、ファッションが楽しい季節でもあります。

草彅 とは言えね、季節に関係なく、僕は相変わらずヴィンテージが好きですね。1930~50年くらいのアメリカの古い服がすごく好き。いいなと思ったら買っちゃうんだけど、スーパーヴィンテージになるととんでもない金額なんですよね……。

――ヴィンテージに合わせるスタイリングは?

草彅 ボロボロのヴィンテージに、きれいめのスラックスを履いたりとか。ボロボロで破けているだけに、中にボーダーを着て切れ目から見せてみたり。

――ボロボロ加減にもこだわりが?

草彅 ありますね。ボロにも美学があるんですよ。ボロ好き層っていうのが一定数いて。生地もほとんど残っていないような服に対して、「この状態でよくぞ残っていてくれた」って。そこにヘンなアドレナリンが出ちゃう(笑)

――それは、着られる状態のものなんですか?

草彅 何とか着られる状態なの(笑)。あえて破れているように見える服があるでしょ。あれはそういう古着からインスパイアされているんじゃないか、って僕は思うんだよね。規格外をファッションとしているんだと。昔からアルチザンとか、一点ものが好きなんですよ。バックボーンがクレイジーであればあるほど好き。普通の服には萌えなくて(笑)。最近はネットとかで古着屋さんを、いろいろ発見できちゃう。昔は欲しいものがどこにあるか、なかなか分からなかったんだけどね。すっかりテクノロジーにやられていますよ。ハッキングされちゃってるなぁ(笑)

――楽しそうな執着ですね(笑)。

草彅 ホントにそう! シッダールタになって瞑想して、ハッキングされた自分をどうにかしないと!

――確かに、見つけたいものが見つけやすい時代にはなりましたよね。

草彅 便利になりましたよね。その分、自分でコントロールできるようにならないと。最近は日本の古着屋さんからだけじゃなく、アメリカからも“ツヨシ、コレドウ?”って(笑)

――そんな草彅さんへの戒めにと、遣わされたのがシッダールタという役なのかもしれませんね。

草彅 そうそう、いいこと言いますね(笑)。シッダールタを通じて、僕はヴィンテージと改めて向き合っていかねばならない!

草彅 剛(くさなぎ・つよし) 1974年、埼玉県出身。1991年、CDデビュー。近年の出演作に、第48回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞を受賞した映画『碁盤斬り』(24)、第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞した『ミッドナイトスワン』(20)、舞台『シラの恋文』(23)、『ヴェニスの商人』(24)ドラマ「罠の戦争」(23)、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(23)、ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(23)など。主演ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに」の放送が控えている

スタイリスト/細見佳代(ZEN creative)ヘアメイク/荒川英亮

舞台『シッダールタ』【原作】ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」「デーミアン」(光文社古典新訳文庫 酒寄進一訳)【作】長田育恵【演出】白井 晃【音楽】三宅 純【出演】草彅 剛、杉野遥亮、瀧内公美鈴木 仁、中沢元紀、池岡亮介、山本直寛、斉藤 悠、ワタナベケイスケ、中山義紘柴 一平、東海林靖志、鈴木明倫、渡辺はるか、仁田晶凱、林田海里、タマラ、河村アズリ松澤一之、有川マコト、ノゾエ征爾

■東京公演:2025年11月15日(土)~12月27日(土)世田谷パブリックシアター■兵庫公演:2026年1月10日(土)~1月18日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール公式サイトはこちら

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