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ルベーグ積分
ルベーグ積分

ルベーグ積分

ルベーグ積分
  • レベル: ◎ 大学数学
  • 解析

更新 2023/04/22

この記事ではルベーグ積分について解説します。

モチベーション

ルベーグ積分はリーマン積分よりも幅広い関数を扱える積分です。

ルベーグ積分を学べばリーマン積分できなかった関数も積分できたりします。

例えば,以下の不思議な関数を考えます。 f(x)={1(x∈Q)0(x∈R\Q) f (x)= \begin{cases} 1 &(x \in \mathbb{Q})\\ 0 &(x \in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}) \end{cases} f(x)={10​(x∈Q)(x∈R\Q)​ 有理数では 111,無理数では 000 となる関数です。ディリクレ関数という有名な関数です。さて ∫01f(x)dx \int_0^1 f(x) dx ∫01​f(x)dx はどうなるでしょうか?

  • リーマン積分(区分求積の方法)では,この関数は積分できません。→ リーマン積分
  • しかし,ルベーグ積分はできて,結果は 000 になります(この記事の後半で導出します)。

前提知識として「ルベーグ測度」「可測集合」が必要になります。ルベーグ測度をご覧ください。

可測関数

まず,連続関数を拡張した可測関数というものを考えます。

XXX を R\mathbb{R}R の部分集合とします。関数 f:X→R∪{±∞}f : X \to \mathbb{R} \cup \{ \pm \infty \}f:X→R∪{±∞} を考えます。

※ 以下の議論は,より一般に XXX が Rn\mathbb{R}^nRn の部分集合であるときにも適用できます。

可測関数とは

XXX 上の関数 fff が可測であるとは,任意の a∈R∪{±∞}a \in \mathbb{R} \cup \{ \pm \infty \}a∈R∪{±∞} に対して E(f>a)={x∈X∣f(x)>a} E (f > a) = \{ x \in X \mid f(x) > a \} E(f>a)={x∈X∣f(x)>a} が可測集合になることを指す。

E(f>a)=f−1({y∣y>a})E(f>a) = f^{-1} (\{ y \mid y > a \})E(f>a)=f−1({y∣y>a}) とも表せます。

定理

連続関数は可測関数。

証明

fff を連続関数とする。

{y∣y>a}\{ y \mid y > a \}{y∣y>a} は開集合なので,連続関数の定義より f−1({x∣x>a})f^{-1} (\{ x \mid x> a \})f−1({x∣x>a}) も開集合になる。→ 連続関数とは何なのか~いくつかの重要な定義

そして,開集合は可測集合(→ルベーグ測度)なので,連続関数は可測関数。

簡単な性質 性質1

fff が可測関数であるとき,以下はどれも可測集合である。 E(f≧a)E(f<a)E(f≦a)E(f=a)E(f<∞)E(f>−∞)E(f=∞)E(f=−∞)\begin{alignedat}{5} &E(f \geqq a) &&\quad E(f < a) &&\quad E(f \leqq a) &&\quad E (f = a)\\ &E(f < \infty) &&\quad E(f > - \infty) &&\quad E(f = \infty) &&\quad E (f = -\infty) \end{alignedat}​E(f≧a)E(f<∞)​​E(f<a)E(f>−∞)​​E(f≦a)E(f=∞)​​E(f=a)E(f=−∞)​

可測集合の共通部分は可測であったことを思い出すと,次の性質もわかります。

性質2

fff が可測関数であるとき,以下はどれも可測集合である。 E(a<f<b)E(a<f≦b)E(a≦f<b)E(a≦f≦b) E(a < f < b) \quad E(a < f \leqq b)\\ E(a \leqq f < b) \quad E(a \leqq f \leqq b) E(a<f<b)E(a<f≦b)E(a≦f<b)E(a≦f≦b)

可測関数の和差積商

可測関数の和差積商は可測です。可測関数列の極限も可測です:

定理

以下,f,gf,gf,g は可測関数とする。{fn}\{ f_n \}{fn​} は可測関数の列とする。

  1. α,β∈R\alpha , \beta \in \mathbb{R}α,β∈R に対して αf+βg\alpha f + \beta gαf+βg は可測関数である。
  2. fgfgfg は可測関数である。g≠0g \neq 0g=0 であれば f/gf/gf/g も可測である。
  3. 次の関数は可測関数である。 sup⁡nfn, inf⁡nfn, lim sup⁡n→∞fn, lim inf⁡n→∞fn \sup_{n} f_n, \ \inf_{n} f_n, \ \limsup_{n \to \infty} f_n, \ \liminf_{n \to \infty} f_n nsup​fn​, ninf​fn​, n→∞limsup​fn​, n→∞liminf​fn​
  4. lim⁡n→∞fn\displaystyle \lim_{n \to \infty} f_nn→∞lim​fn​ (各点収束として考える) は可測関数である。

単関数による近似

単関数

XXX の部分集合で,可測な集合 EEE に対して特性関数 χE(x)\chi_E (x)χE​(x) を χE(x)={1(x∈E)0(x∉E) \chi_E (x) = \begin{cases} 1 & (x \in E)\\ 0 & (x \notin E) \end{cases} χE​(x)={10​(x∈E)(x∈/E)​ と定めます。

さらに有限個の互いに交わらない可測集合 E1,E2,⋯ ,EnE_1 , E_2 , \cdots , E_nE1​,E2​,⋯,En​ について ∑i=1naiχEi(x) \sum_{i=1}^n a_i \chi_{E_i} (x) i=1∑n​ai​χEi​​(x) と表される関数を単関数といいます。

ルベーグ積分を定義するために可測関数を単関数で近似していきます。

近似定理 定理

fff を XXX 上の非負値可測関数とする。

このとき単関数列 {fn}\{ f_n \}{fn​} で,各点 xxx について fn(x)f_n (x)fn​(x) が単調増加し f(x)f (x)f(x) に収束するものが存在する。

証明

nnn を正の整数とする。j=0,⋯ ,n2n−1j = 0,\cdots , n2^n-1j=0,⋯,n2n−1 として Ej={x∣j2n≦f(x)<j+12n} E_j = \left\{ x \mid \dfrac{j}{2^n} \leqq f(x) < \dfrac{j+1}{2^n} \right\} Ej​={x∣2nj​≦f(x)<2nj+1​} と定義する。また, E={x∣f(x)≧n} E = \{ x \mid f(x) \geqq n \} E={x∣f(x)≧n} と定義する。

fff は可測であったため,EjE_jEj​,EEE は可測集合です。

単関数 fnf_nfn​ を fn(x)=nχE(x)+∑j=1n2n−1j2nχEj(x) f_n (x) = n \chi_E (x) + \sum_{j=1}^{n2^n - 1} \dfrac{j}{2^n} \chi_{E_j} (x) fn​(x)=nχE​(x)+j=1∑n2n−1​2nj​χEj​​(x) と定める。

構成より各点で fn(x)≦fn+1(x)f_n (x) \leqq f_{n+1} (x)fn​(x)≦fn+1​(x) である。

xxx を固定する。

f(x)<∞f(x) < \inftyf(x)<∞ のとき,十分大きな nnn で,ある jjj について x∈Ejx \in E_jx∈Ej​ であるため,∣f(x)−fn(x)∣<12n|f(x) - f_n (x)| < \dfrac{1}{2^n}∣f(x)−fn​(x)∣<2n1​ となり,lim⁡n→∞fn(x)=f(x)\displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n (x) = f(x)n→∞lim​fn​(x)=f(x) である。

一方 f(x)=∞f(x) = \inftyf(x)=∞ であれば,任意の nnn で fn(x)=nf_n (x) = nfn​(x)=n となるため,同じく lim⁡n→∞fn(x)=f(x)\displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n (x) = f(x)n→∞lim​fn​(x)=f(x) である。

以上より示された。

「非負値」がポイントです。というのも,関数が負の値も取ると,負の部分をどのように単関数で近似するか考える手間ができてしまいます。この定理では「元々負の値を取らない」ことにして面倒な部分をショートカットしたのです。

ルベーグ積分の定義

単関数の積分

XXX 上の単関数 ∑i=1naiχEi(x)\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i \chi_{E_i} (x)i=1∑n​ai​χEi​​(x) の積分を ∫X∑i=1naiχEi(x)dμ=∑i=1naiμ(Ei) \int_{X} \sum_{i=1}^n a_i \chi_{E_i} (x) d\mu = \sum_{i=1}^n a_i \mu (E_i) ∫X​i=1∑n​ai​χEi​​(x)dμ=i=1∑n​ai​μ(Ei​) と定めます。

単関数によって描かれる「短冊」の面積を足したものを積分と定義しているとイメージしてください。

非負値の関数の積分

fff を非負値の可測関数とします。

さきほどの「単関数による近似定理」から得られる単関数の近似を {fn}\{ f_n \}{fn​} とします。fff の積分を ∫Xf(x)dμ=lim⁡n→∞∫Xfn(x)dμ \int_{X} f (x) d\mu = \lim_{n \to \infty} \int_{X} f_n (x) d\mu ∫X​f(x)dμ=n→∞lim​∫X​fn​(x)dμ と定義します。

fff の積分値は fff が成す面積を,単関数 fnf_nfn​ の積分(面積)で近似して計算しているとイメージしてください。

一般の関数の積分

fff を可測関数とします。

fff が負の値を取るとき,どうしましょう。

まず,fff の正部分と負部分を分割します。

f+,f−f_+ , f_-f+​,f−​ を f+(x)=max⁡(f(x),0)f−(x)=−min⁡(f(x),0) f_{+} (x) = \max (f(x), 0)\\ f_{-} (x) = - \min (f(x),0) f+​(x)=max(f(x),0)f−​(x)=−min(f(x),0) と定義します。すると,どちらも非負値の(可測)関数となり, f(x)=f+(x)−f−(x) f(x) = f_+ (x) - f_- (x) f(x)=f+​(x)−f−​(x) です。

この定義を元に fff の積分を ∫Xf(x)dμ=∫Xf+(x)dμ−∫Xf−(x)dμ \int_{X} f(x) d\mu = \int_{X} f_+ (x) d\mu - \int_{X} f_- (x) d\mu ∫X​f(x)dμ=∫X​f+​(x)dμ−∫X​f−​(x)dμ により定めます。

この定義には1つ「穴」があります.というのも ∫Xf+(x)dμ,∫Xf−(x)dμ\displaystyle \int_{X} f_+ (x) d\mu , \int_{X} f_- (x) d\mu∫X​f+​(x)dμ,∫X​f−​(x)dμ が共に ∞\infty∞ のとき,∞−∞\infty - \infty∞−∞ の形になってしまいます。

そのようなケースを排除するために,fff が定積分を持つということを,∫Xf+dμ\displaystyle \int_X f_+ d\mu∫X​f+​dμ か ∫Xf−dμ\displaystyle \int_X f_- d\mu∫X​f−​dμ のいずれかが有限値であることと定めます。

積分の記法について

上の定義では積分を μ\muμ(ミュー)を用いて, ∫Xf(x)dμ \int_{X} f(x) d\mu ∫X​f(x)dμ と書きましたが,場合によっては dμd\mudμ の代わりに dxdxdx や dμ(x)d\mu (x)dμ(x) が用いられることもあります。

今回ルベーグ測度についてのみ取り扱っていますが,構成によってはルベーグ測度以外の測度を作って,その測度上で積分することができます。

こうしたとき,測度によって積分値は変わるので,今どのような「測り方」をしているのか明確にしたいときは dμd\mudμ を用います。

積分の性質

定義から次の性質が得られます。

ルベーグ積分の性質
  1. XXX は R\mathbb{R}R の部分集合,f,gf,gf,g は XXX 上で定積分を持つ可測関数とする。

∫Xf(x)dμ+∫Xg(x)dμ=∫X(f(x)+g(x))dμ \int_X f(x) d\mu + \int_{X} g (x) d\mu = \int_X (f(x) + g(x)) d\mu ∫X​f(x)dμ+∫X​g(x)dμ=∫X​(f(x)+g(x))dμ

  1. X,YX,YX,Y は R\mathbb{R}R の部分集合で X∩Y=ϕX \cap Y = \phiX∩Y=ϕ とする。fff は X∪YX \cup YX∪Y 上の可測関数とする。

∫X∪Yf(x)dμ=∫Xf(x)dμ+∫Yf(x)dμ \int_{X \cup Y} f(x) d \mu = \int_X f (x) d\mu + \int_Y f(x) d\mu ∫X∪Y​f(x)dμ=∫X​f(x)dμ+∫Y​f(x)dμ

ルベーグ可積分

ルベーグ積分が有限になる関数をルベーグ可積分な関数と定義します。

ルベーグ可積分

定積分を持つ可測関数 fff がルベーグ可積分である/ルベーグ積分可能であるとは,∫Xfdμ\displaystyle \int_X f d\mu∫X​fdμ が有限値であることを指す。

ルベーグ可積分な例

リーマン積分可能な関数はルベーグ積分も可能です。

冒頭で紹介した関数 f(x)={1(x∈Q)0(x∈R\Q) f (x)= \begin{cases} 1 &(x \in \mathbb{Q})\\ 0 &(x \in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}) \end{cases} f(x)={10​(x∈Q)(x∈R\Q)​ はルベーグ可積分です。実際 f(x)=χQ(x)f(x) = \chi_{\mathbb{Q}} (x)f(x)=χQ​(x) と表されるため, ∫Rf(x)dμ=μ(Q)=0 \int_{\mathbb{R}} f(x) d\mu = \mu (\mathbb{Q}) = 0 ∫R​f(x)dμ=μ(Q)=0 と積分されます。

→ ディリクレ関数の定義と有名な3つの性質

ほとんどいたるところ

ディリクレ関数の積分をよく見ると,測度が 000 の集合はルベーグ積分において「無視」してもよいことがわかります。このような状況に「ほとんどいたるところ」という名前を付けましょう。

定義

X を関数の性質(f(x)<g(x)f(x) < g(x)f(x)<g(x) や f(x)=∞f(x) = \inftyf(x)=∞ など)とする。

ほとんどいたるところで X であるとは,X が成り立たない xxx の集合の測度が 000 であることを意味する。

  1. ディリクレ関数は,ほとんどいたるところで 000 である。
  2. f(x)=[x]f(x) = [x]f(x)=[x] はほとんどいたるところで連続である。

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また,ルベーグ積分に関連する関数のクラスとして「絶対連続」という概念もあります。興味がある方は是非調べてみてください。

ルベーグ積分ができない関数の例を考えてみましょう。実は身近なところに……? 答え合わせは今後の記事をお楽しみに。

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