「後頭部をかじられている音が頭蓋骨に響いて…」熊に襲われ、血だらけで生還した60代男性が明かす「涙が止まらなくなるほどの恐怖」
2025.10.07中島 茂信
フードライター
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藪の中から「黒いもの」が突進してきた
去年(2024年)11月、新潟県津南町の津田優希さん(仮名60代)がツキノワグマに襲われた。登山、沢登り、山スキーなどアウトドア派の津田さんが熊と遭遇したのは、山の中ではない。自宅から徒歩5分程度の、集落から少し離れた畑に囲まれた雑木林の中。正午頃キノコ採りに向かう途中、藪の中から「黒いもの」が突進してきた。
「5〜6m先で仁王立ちになったとき、熊だと気づきました」
キノコ採り用のバッグに熊除けの鈴を付けていたが、出会ってしまった。数秒間、目と目が合ったが、熊は微動だにしなかった。とても長く感じられた瞬間だった。
再び熊が突進。1m手前で止まった。驚いて大声を出した瞬間、熊が立ち上がった。
「目の高さはほぼ同じ(172cmほど)。それ以外は熊の動きが俊敏すぎて記憶がすべて飛んでいます」
津田さんが熊に襲われた雑木林この記事の全ての写真を見る(全4枚)後頭部を齧られているときの頭蓋骨に響く音
引きずり倒されてからのことは覚えている。のしかかられた瞬間、「やばい」と思い、腹ばいになり、両手で後頭部と首をガードし、うずくまっていた。
「ガリガリガリ。後頭部を齧られているときの、頭蓋骨に響く音がいまも脳裏から離れません」
しばらくすると飽きたのか、立ち去った。血だらけで自宅に戻った。妻が消防に連絡。ドクターヘリで大学病院に搬送された。
右後頭部に齧られた傷があり、両頬とこめかみにも外傷があった。右の耳たぶは皮一枚でつながっていた。顔を防御したときにやられたのか、両手の甲がひらいていた。熊被害に詳しい整形外科医が、「こんな傷は見たことがない」と首をかしげた怪我が左腿にあった。小さな穴が貫通していたのだ。「1cmずれていたら大動脈が切れて大量出血で死んでいたかもしれない」と言われた。
耳鼻咽喉科(首から上の治療は耳鼻咽喉科が担当)の主治医は当初、「全治3か月の重症」と診断したが、右目に痛みと違和感を感じていたことから全治6か月になった。
両頬には熊に叩かれたと思われた傷が左腿前部から後部(イボのような傷)にかけて穴があいていた。爪痕か牙か不明-AD-「命に別状はない」と報じられたが……
事故当日、地元の複数の媒体が、「津南町在住の60代男性が熊に襲われた。男性には意識があり、命に別状はない」と報じた。
「この報道に問題があるのではないか」と津田さんは苦言を呈する。「ドクターヘリで病院に搬送された」と詳細を伝えた媒体もあり、「大怪我を負ったに違いない」と認識した人もいたと思われる。けれど、ただ単に「病院に搬送され、命に別状はない」と報じられたことで「軽症だ」と思い込んだ人も少なくなかった。
どの媒体も実名こそ報じなかったものの、住所と年齢から「津田さんだ」と思った複数の友人から携帯電話に連絡があった。軽症だと思われたのか、冷やかし半分のメールもあったという。
「熊に襲わたのに『命に別状はない』と報じられると、熊は怖くない動物だと勘違いする人もいるに違いありません。『顔などに傷を負い全治3か月の重症』だとより正確に伝えるべきでした」
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