かっこいい妖怪
かっこいい妖怪62体の妖怪注目🇯🇵日本語🇺🇸English🇪🇸Español🇫🇷Français🇰🇷한국어🇨🇳中文日本の妖怪といえば「怖い」「不気味」といったイメージが強いですが、その中には思わず見惚れてしまうような「かっこいい妖怪」たちも数多く存在します。鋭い眼光を放つ戦いの鬼、華麗に舞うように現れる妖艶な怪異、そして伝説に名を刻む英雄的な存在──彼らの姿は単なる恐怖の象徴を超え、力強さや美しさ、さらにはカリスマ性を備えています。 このコレクションでは、歴史的な絵巻や伝承に描かれた妖怪の中から「かっこいい」と評される逸品を集め、その魅力を紹介します。あなたの心を惹きつける、最強でクールな妖怪との出会いをぜひ楽しんでください。
更新: 2026/1/12妖怪かっこいい妖怪イケメン妖怪強い妖怪クールな妖怪日本の伝説妖怪図鑑怪異和の怪物収録妖怪
62体の妖怪が収録されています
一反木綿いったんもめん
住居・器物伝統鹿児島県に伝わる怪異で、長さ一反ほど、幅は三寸前後の木綿の布が夕暮れから夜分にかけて空をひらひら舞い、人の顔や首に巻きつき息を詰まらせるとされる。姿は布切れ同然で、声も出さず音も立てないという。『大隅肝属郡方言集』(野村伝四・柳田國男)に名がみえ、土地では子どもへの戒めとして語られた。正体は不要となった布が怪異化したものとも、風の妖と見る説もある。
薩摩国・大隅国(現・鹿児島県)
一寸法師いっすんぼうし
人妖・半人半妖伝統一寸法師は、御伽草子に典拠をもつ小さな男の主人公譚。子なき老夫婦の祈願により生まれるが成長せず、一寸ほどの身で都へ上り、才覚と勇気で名を上げる。鬼退治と打出の小槌による成長・成就が骨子で、後世の絵巻・草双紙・口承により各地へ流布した。小人譚は神話の少名毘古那神に連なる基層を持つと解される。
摂津国・難波浦(伝)
からかさ小僧からかさこぞう
住居・器物伝統古びた和傘が化けたとされる妖怪。一般には一つ目で長い舌を垂らし、一本足で跳ねる姿で描かれるが、二本足や腕を備える描写もある。室町期の百鬼夜行絵巻に傘の妖怪像が見られ、江戸以降は草双紙や浮世絵、かるた、舞台で定着した。実地の口承は乏しく、器物の妖怪の中でも図像を通じて著名になった代表的存在とされる。
不詳
アマビエあまびえ
人妖・半人半妖伝統弘化三年四月中旬、肥後国の海上に現れたと伝わる予言の妖怪。夜ごと海中より光を放ち、役人の前に姿を見せ、自らをアマビエと名乗った。諸国の豊作が六年続く一方で疫病が流行する旨を告げ、その災厄に際しては自身の姿を写した絵を人々に見せよと言い残し、海へ戻ったという。瓦版一種の記録のみが知られ、詳細は不詳。
肥後国(現・熊本県)
以津真天いつまで
動物変化伝統以津真天は人間の声で「いつまで…」と不気味に鳴き、聞いた者に死を予兆する怪鳥。古くから「この声を聞けば三日以内に命を落とす」と伝えられ、恐れられてきた。
滋賀県・比良山周辺
鳴釜なりがま
住居・器物伝統長年用いられた鉄の釜に精が宿り、人の身に似た形をとると伝える付喪神。炊事の折に釜が発する鳴動や唸りを吉凶のしるしとみる信仰と結びつき、音色を占として解した古習に由来する名とされる。絵画資料では頭が釜の姿で描かれ、夜更けに現れては鳴音を立て、人心を試すと語られる。
不詳
大百足おおむかで
鬼・巨怪伝統大百足は巨大な百足の妖怪で、甲は硬く刃や矢をはね返すという。体は山を幾重にも巻くほど長大で、脚は火のように赤く輝き、毒牙は甲冑をも噛み砕くと畏れられた。水神たる大蛇・龍と対立し、湖沼や山野に現れては争ったと伝えられる。百足は勇猛不退の象徴とされ、武家や商人から吉兆としても意識されたが、その実体は各地で異同が多く詳細は不詳である。
近江国(琵琶湖・三上山)ほか各地
偽汽車にせきしゃ
総称・汎称伝統偽汽車は、蒸気機関車の普及期に各地で語られた怪異で、線路上に実在しない汽車が現れて走行し、直前で掻き消えるとされる。多くは狐や狸、ことに狢が汽車に化けて人を惑わすと解され、消失後に線路脇で獣の轢死体が見つかる筋立てが伴う。夜の山野に響く新奇な汽笛や走行音を、獣の仕業と受け止めた民俗的解釈が背景にあるとされる。
日本各地(主に鉄道沿線)
朧車おぼろぐるま
住居・器物伝統朧車は、江戸時代の画家・鳥山石燕が『今昔百鬼拾遺』に描いた牛車の怪。おぼろ夜に軋む車音とともに現れ、牛車の簾の位置に巨大な顔が嵌るように覗く姿で示される。由来は平安の「車争い」に伴う怨みの顕現と解され、宮中行事や加茂の祭礼にまつわる因縁と結び付けられる。百鬼夜行譚との関連も指摘され、器物怪の一類として位置づけられる。
京都
片輪車かたわぐるま
住居・器物伝統片輪車は、炎に包まれた牛車の片輪のみが夜道を走る怪異で、車輪の中心に人の顔が現れると伝えられる。江戸前期の怪談集や随筆に記録があり、見た者に災いが及ぶ、あるいは噂するだけでも祟ると畏れられた。姿は男相・女相の両説があり、京都・近江などでの出現談が知られる。同時代の絵画資料にも描かれ、輪入道との関係が論じられてきた。
山城国・近江国ほか
天狗てんぐ
山野の怪伝統天狗(てんぐ)は、日本の山岳に住むとされる妖怪・神格的存在であり、しばしば赤ら顔に長い鼻、または鳥のようなくちばしを持つ姿で描かれる。背には翼を備え、空を飛翔すると信じられてきた。古来より修験道や山伏の姿と結びつけられ、武芸や法力に優れ、人間の修行者を試したり導いたりするとされる。一方で、傲慢な性格や荒々しい力を持ち、山に近づく者を惑わせ、時に祟りをなすとも語られる。
山岳地帯
海坊主うみぼうず
水の怪伝統海坊主(うみぼうず)は、日本各地の沿岸部に伝わる海の妖怪で、特に漁師の間で恐れられてきた。巨大な黒い影、あるいは禿げ頭の坊主の姿で海面に現れるとされ、その出現はしばしば海難や船の沈没を予兆する。体の全貌は見えず、海上に頭や肩だけが突き出している姿で語られることが多い。夜の海や嵐の最中に現れ、船を転覆させたり、海底に引きずり込むと信じられてきた。
漁村・航海伝承
牛鬼うしおに
動物変化伝統海や川辺に現れる恐ろしい妖怪。牛のような頭と蜘蛛や鬼に似た体を持ち、人を襲い喰らうと言われる。土地によって姿の伝承は異なるが、多くの場合「海辺で出会ってはならぬ存在」とされる。
四国・中国地方沿岸(特に愛媛県・高知県など瀬戸内海沿岸)
異獣いじゅう
動物変化伝統江戸後期、越後国魚沼郡の山間に出没したと記録される怪しき獣。『北越雪譜』第2編巻4に「猿に似て猿に非ず」と記され、頭髪は長く背に垂れ、背丈は人より大きい。人を害すよりは食を乞い、時に荷を運ぶなど人の働きを助けたと伝わる。正体は明かでなく、山の精か稀なる獣の類と見なされ、織物産地の口碑にしばしば語られる。
越後国魚沼郡(現・新潟県魚沼地方、十日町市池谷周辺)
赤頭あかがしら
山野の怪伝統高知県吾川郡いの町の勝賀瀬に伝わる山野の怪。赤い髪は陽光のように輝き、直視できぬほど眩しいという。二本足で歩むが草むらに紛れて足もとは見えにくい。人を襲う性質はなく、出遭った者はその強烈な赤光に目を奪われ、見失うことが多いとされる。江戸末から明治初期頃の妖怪絵巻や地元資料に名が見える。
土佐国吾川郡勝賀瀬(現・高知県吾川郡いの町)
赤舌あかした
総称・汎称伝統江戸期の絵巻や双六に見られる妖怪名。黒雲から毛深い顔と大きな舌、爪ある手がのぞく図が通例で、全身像や性質は記述不詳。鳥山石燕『画図百鬼夜行』では水門上に描かれるが解説は付かない。同時代の絵双六『十界双六』や『百鬼夜行絵巻』にも名が見え、近似の図様「赤口」も諸絵巻に描かれる。名称は陰陽道の赤舌神・赤舌日との関係が指摘されるが確証はない。
日本各地(典拠不詳)
金烏きんう
動物変化伝統金烏は、太陽の内に棲むと考えられた想像上の烏で、しばしば三本足の姿で表される。中国古典に「日中の烏」と見え、日本にも陰陽道や仏教絵画を通じて受容された。太陽そのものの異名として用いられることもあり、月に対する玉兎・蟾蜍と対概念をなす。描像では烏は黒く、背後の日輪が金朱で彩られることが多い。
中国起源/日本伝来
青鷺火あおさぎび
動物変化伝統夜間、サギの体が青白く光って見える怪異。別名は五位の火・五位の光。江戸期の画集や随筆に記録があり、月夜や雨夜にも目撃される。正体はゴイサギとされることが多く、飛翔時に青い火のように見え、人々を驚かせた。発光は水辺の付着物や羽毛の反射などと説明されることもあるが、地域では怪火として語り継がれる。
各地(主に江戸・大和・佐渡などの伝承)
がしゃどくろがしゃどくろ
霊・亡霊伝統がしゃどくろは、埋葬されず飢えや戦災で亡くなった者の怨念や骨が集まり、夜闇に現れる巨大な髑髏の妖怪とされる。がちがちと歯音を鳴らし彷徨い、人を掴み潰すと語られるが、古い民間伝承に直接の典拠は乏しい。昭和中期の児童書や娯楽作品で像が整い、巨大骸骨の図像は江戸の浮世絵に先行例があるが、同一の妖怪を指すものではない。
不詳(近代の創作起源)
九尾の狐きゅうびのきつね
動物変化伝統九尾の狐(きゅうびのきつね)は、長命を重ねた狐が化生し、尾が九つに分かれた姿となった妖狐である。一般に非常に聡明で美しく、強大な霊力を持ち、変化の術に長けて人間を惑わすとされる。一尾ごとに力を増し、九尾に至るとほぼ神格に等しい存在となり、しばしば神仏や王権と深く関わる象徴的存在として描かれる。
全国
玉藻前たまものまえ
動物変化伝統平安末、鳥羽院に仕えた絶世の美女とされ、才色兼備で宮中に寵愛されたが、その正体は白面金毛の九尾の狐と伝えられる。やがて陰陽師により正体を見破られ逃走、関東へ落ち延びた後、下野国那須野で石となったと語られる。伝説の成立は室町前期以前とされ、『神明鏡』や御伽草子『玉藻の草子』などに見える。
那須野(下野国)
小玉鼠こだまねずみ
動物変化伝統小玉鼠は、秋田県北秋田郡のマタギに伝わる山中の怪。外見はハツカネズミやヤマネに似た小獣で、体は球状に近い。人に出会うと立ち止まり、みるみる膨張し、鉄砲のような轟音とともに破裂して肉片を散らすとされた(破裂せず大音響のみを発する説もある)。この出会いは山の神の怒りの兆しとされ、遭遇した猟師は直ちに猟をやめて山を退いた。
秋田県北秋田郡
毛羽毛現けうけげん
総称・汎称伝統鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に描かれた、全身毛むくじゃらで稀にしか見られぬとされる妖怪。作中解説では「希有希見」とも記し、その名義を示す。姿の形容として、体毛に覆われた「毛女」を引き合いに出すが、由来や性行について具体の記述は乏しい。後世には家の湿処に棲むとの説が流布するが、江戸期史料に確証はない。
不詳
木霊こだま
山野の怪伝統山中の大樹や岩間に宿るとされる精。声を投げると遅れて返る現象を木霊の応答と捉え、やまびことも関連づけられる。古くは木の神格の余映として理解され、『古事記』の久々能智神と結び付けられる解釈や、『和名類聚抄』に木の神の和名「古多万」の記載がある。樹木の寿命や伐採に関わる祟りや瑞祥の徴とも語られてきた。
日本各地の山林
琴古主ことふるぬし
付喪神・骸怪伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれる箏の付喪神。破損した筑紫箏に目口が生じ、乱れた糸が髪のように垂れる姿で表される。石燕は「八橋といえる盲人の改めしより…」と記し、音色を理解されず忘れられた箏の怨みが形を得たものと示唆する。中世絵巻に見える楽器妖怪の系譜を継ぎ、器物が年を経て霊性を帯びる観念を体現する妖怪である。
不詳
金霊(および金玉)かなだま(および かねだま)
霊・亡霊伝統金霊は金の気の具現、あるいは福徳を象徴する精の名で、善行に励む家に兆しとして現れると解された。江戸の絵巻では土蔵に金銀が満ちる図で示され、実体の怪異というより吉報の寓意とされる。一方の金玉は玉状または怪火として飛来し、家に迎えると家運が開けると語られるが、損なえば衰運を招くと戒められる。両者は混称される例があるが、性格づけはやや異なる。
日本各地(江戸・関東・駿河などの記録が目立つ)
鎌鼬かまいたち
動物変化伝統鎌鼬は、つむじ風に乗って現れるとされた怪で、人の肌を刃物で払ったように切り裂くと信じられた。遭った直後は痛みが乏しく出血もしない、または後から痛みと血が出るなどの伝えがある。江戸期以降は鎌の爪を持つイタチの姿で描かれ、現象そのものや風神・小妖の仕業など説明は地域により異なる。冬の季語としても用いられる。
中部・近畿・信越を中心に各地
サンドワームさんどわーむ
総称・汎称伝統サンドワームは砂地や砂丘の下を進む巨大な虫状の怪物を指す総称で、日本の古典的妖怪伝承には定着していない。近現代の創作・架空譚で広く流通し、砂中を潜行して振動や臭いに反応し獲物を呑み込む存在として描かれる。名称は英語由来で、同名は環形動物の語義とも重なるが、妖怪的には地中の怪物として理解される。
不詳
朱雀すざく
動物変化伝統朱雀は四神の一つとして南方を司る霊鳥で、火や夏、赤色に結び付けられる。中国で成立した方位・五行思想の影響を受け、古代日本にも受容された。平安京の条坊制や社寺の造営では南域の守護象として言及され、朱雀門・朱雀大路の名に残る。図像は翼を広げた赤い鳥として表されるが、具体相は一定せず、神獣として尊崇の対象となった。
日本各地(古代宮都・寺社の方位信仰)
瀬戸大将せとたいしょう
付喪神・骸怪伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた、瀬戸物の器や道具が寄り集まって甲冑武者の姿となった付喪神的存在。唐津焼と瀬戸焼をめぐる趣向的な対比を背景に、器物が勢力を競うイメージとして表象された。実在の口承や地域伝承に基づくものではなく、石燕の画と詞書による見立てが中心資料である。
不詳(江戸時代の絵画作品)
白溶裔しろうねり
付喪神・骸怪伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた妖怪。ぼろ布が風にたなびくさまを竜のように擬えた姿で示され、石燕は「古きふきんの化けたるもの」と注する。名称は『徒然草』の人物名「しろうるり」をもじった語とされ、石燕の造形による付喪神的存在と理解される。具体的な害や挙動は作中に詳述されず、後世の解釈が加わった例が多い。
不詳
栄螺鬼さざえおに
動物変化伝統江戸期の絵師・鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた、サザエが鬼と化した姿の妖怪。貝の身や蓋に人の腕や眼が生えたように表され、変成譚の寓意として示される。図は『礼記』の変化譚を下敷きに、自然物が異形へ転ずる造化の不可思議を示す趣向で、特定の土地伝承よりも画題・観念的妖怪として知られる。近世絵巻にも類似像が見られる。
不詳
酒呑童子しゅてんどうじ
人妖・半人半妖伝統平安期の都周辺で人を攫う大鬼の頭領。豪飲を好み、配下の鬼とともに山中の館に拠って往来を襲ったとされる。名は酒好きに由来し、童子は僧形・若者姿を指す呼称。源頼光と四天王によって討伐され、首は切られても噛みついたと伝わる。住処は大江山・伊吹山・愛宕山など諸伝があり、陰陽師の占によって所在が定められたと語られる。
丹波国・山城国(大江山・愛宕山など諸説)
鍾馗しょうき
神霊・神格伝統鍾馗は中国の民間信仰に由来する魔除けの神格で、日本では疱瘡除け・疫病除け、さらに学業成就の守護として崇められる。長い髭をたくわえ、官人装束で剣を帯び、鬼を睨み退ける図像で知られる。平安末の辟邪絵に早くも現れ、後世は端午の節句や年末年始の厄除けとして掛幅や人形、屋根飾りに用いられた。
中国由来・日本各地に流布
鈴彦姫すずひこひめ
住居・器物伝統鈴彦姫は、鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた妖怪。女性の姿で、頭上に神楽鈴を載せ、鈴のような顔立ちを示す。石燕は天岩戸神話の天鈿女命を引き、神楽との連関を示唆するが、由来や正体は明示しない。中世の百鬼夜行絵巻に見られる神楽鈴を持つ怪の図像や、鈴が「神を招き出す」観念との連想が下敷きとされる。具体の出没談は伝わらず、図像先行の観念的妖怪である。
不詳
平将門たいらのまさかど
神霊・神格伝統平安中期、関東の豪族で「平将門の乱」を起こし討たれた人物。没後、その首が都で腐らず叫んだと伝えられ、やがて怨霊・御霊として畏敬された。首塚伝承や各地の社で祀られ、武運・庶民守護の神格として信仰を集める一方、乱暴に扱うと祟ると恐れられる二面性をもつ。
関東(下総・常陸)
松明丸たいまつまる
山野の怪伝統松明丸は、鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれる火を携えた鳥の妖怪。猛禽の姿で口や爪に炎をまとい、深山の闇に怪光を放つという。石燕は注に「天狗礫の光」と関連づけ、行人の修行を妨げる性と解す。実用の灯りではなく惑乱の火で、夜行する者を迷わせる存在として表象される。史料上の具体的出没地は定かでない。
不詳
滝霊王たきれいおう
神霊・神格伝統江戸期の絵師・鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に見える名で、滝の中に現れる不動明王の相を描いたもの。石燕は「諸国の滝つぼよりあらはるる」と注し、青竜疏に拠り「一切の鬼魅諸障を伏す」と記す。実際には妖怪というより、滝に顕現する明王信仰の表象とみなされ、名称は石燕独自の題とされる。詳細な伝承は乏しく、地域的な異名・具体事例は不詳。
不詳
猪口暮露ちょくぼろん
動物変化伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた妖怪。猪口を頭にのせた虚無僧風の小鬼が箱から現れる図で知られ、解説では唐の玄宗の前に現れた墨の精の逸話を引き、同類の怪と示唆される。名の「暮露」は禅宗系の托鉢僧の呼称と虚無僧風姿、酒器の猪口を掛け合わせた語遊び的造形と解され、半僧半俗像の連想が強い。
江戸
角盥漱つのはんぞう
付喪神・骸怪伝統角盥漱は、鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた漆塗りの盥(角盥)が怪異化した姿とされる付喪神。平安の宮中で用いられた化粧・手水の器が長年の使用や人の念を受けて霊性を帯び、夜更けに水をたたえては文字を浮かべ流すといった怪を示すと伝えられる。作例は小野小町の草紙洗伝説を典拠とする意匠が多い。
京都府(伝承ゆかり)
釣瓶火つるべび
自然現象・自然霊伝統釣瓶火は、夜道の樹上から釣瓶のように上下する怪火。鳥山石燕『画図百鬼夜行』に図像が見え、江戸の怪談本に記された京都西院の火の怪を典拠とする解釈がある。四国・九州では木の精が青白い火球となって枝にぶら下がるとされ、炎は物を焼かず、時に人獣の顔が浮かぶという。怪火の一種とみなされ、静かな山道で目撃譚が多い。
京都府(西院)ほか四国・九州各地の山野
月の兎つきのうさぎ
動物変化伝統満月の面に現れる陰影を兎の姿と見なす伝承上の霊獣。古くは仏教絵画や説話により広まり、月天の象徴として描かれた。中国では不老不死の薬を搗く兎として、日本では餅を搗く兎として解されることが多い。絵画史料では中世から確認でき、江戸中期には餅搗き像が一般化したとされる。
日本各地(仏教伝来以降の広域)
人面樹にんめんじゅ
自然現象・自然霊伝統人面樹は、人の首のような花をつけるとされる樹木の怪。鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に描かれ、『和漢三才図会』が『三才図会』から引く異国記事を典拠とする。花は言葉を解さず、問いかけると笑みを返すという。笑い続けると花は萎み落つとされ、日本各地の在地伝承というより書誌的な博物学的怪説として知られる。
不詳(典拠上は大食国に在ると伝える)
ぬりかべぬりかべ
総称・汎称伝統夜道で行く手をふさぐ見えない壁として知られる妖怪。歩行者は突然進めなくなり、手探りしても平らな面に阻まれるように感じる。多くは暫く立ち止まる、脇へそれる、地面を杖で叩くなどすると解けるとされる。姿は定まらず、見えないもの、あるいはのっぺりした壁状と語られることが多い。人を食らうなどの害は少なく、道迷いを起こす厄介者として恐れられた。
九州北部(福岡・大分)
不落不落ぶらぶら
付喪神・骸怪伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれた提灯の妖怪。竹に結わえられ、裂け目を口のように開いた提灯が道へ覆いかぶさる姿で示される。画中詞には田の提灯火に見ゆれど狐火かもしれぬとの含意が添えられるが、石燕の巻では器物の妖怪群に配されるため、提灯が化した付喪神として理解される。名称は画中に「不々落々」とも記され、一般には「不落不落」と表記される。
不詳
古空穂ふるうつぼ
付喪神・骸怪伝統古空穂は、鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれる靫(うつぼ)の付喪神。矢を収め背負う武具の靫が、時を経て自らはい回るように擬人化した姿で表される。石燕は詞書で「奈須野の原の野干」を射た三浦介・上総介に触れ、彼らの古い靫が変じたものかと示唆する。室町の『百鬼夜行絵巻』に見える弓矢を帯びた器物妖怪の系譜に連なる図像と解される。
不詳
封豨ほうき
動物変化伝統封豨は『山海経』など中国の古書に見える怪獣名で、桑林と称される地に棲むと記される。日本固有の妖怪名ではないが、江戸期以降の博物誌・異国奇談の紹介を通じて名のみが知られ、異境の怪として受容された例がある。姿形や性質の細部は日本側資料では一定せず、主に名と出所のみが引用される存在である。
不詳
払子守ほっすもり
付喪神・骸怪伝統払子守は、禅僧が用いる払子に精が宿ったとされる付喪神。鳥山石燕『百器徒然袋』に、天蓋の下で結跏趺坐し坐禅する姿として描かれる。石燕は禅の公案「狗子仏性」を引き、払子にも仏性が顕れるとの連想を示した。長年用いられた法具が霊威を帯び、静坐して成仏を志す姿として表象されるのが特徴である。
江戸時代・絵巻由来
馬骨ばこつ
付喪神・骸怪伝統馬骨は、朽ちた馬の骨が妖気を帯びて現れたとされる骸の妖怪。江戸期の絵巻『土佐お化け草紙』に描かれ、骨が衣をまとい歩く姿で知られる。恨みや無念を帯びるとも、埋葬や供養の不足が形を成したとも語られる。人を直接害するより、夜道に現れて驚かせ、畜生供養の大切さを示す存在として記録されることが多い。
土佐国
骨女ほねおんな
人妖・半人半妖伝統骨女は、鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれた骸骨の女。石燕は解説で、御伽草子系の怪談に見える、牡丹模様の提灯を携え逢瀬に通う女の骸骨を典拠とし、浅井了意『伽婢子』所収「牡丹燈籠」の女亡霊像に拠ると示す。美女に見まがう姿で男に近づき、実は白骨であるという怪異譚の図像化で、色恋と死の境が交錯する恐怖の象徴として知られる。
江戸(版本起源)
滅法貝めつほうかい
水の怪伝統江戸後期の絵巻「化け物尽くし絵巻」に描かれる水妖の一。貝殻に眼と尾のような突起が付き、跳ねる姿で表される。詞書が付かず作者も不詳で、同絵巻に特有の11種の一つとされる。名称は読み仮名が記され、一般には広く知られぬ存在であったことが示唆される。具体の害や功徳は明示されず、水辺に現れる得体の知れぬ怪として描写される。
不詳
木魚達磨もくぎょだるま
付喪神・骸怪伝統鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれる仏具の妖怪。達磨のような髭面の顔を木魚に生じたものとして表され、円座に座して目を見開く。石燕は同じく仏具の妖怪「払子守」と同類と示唆する。木魚は魚が眠らず目を閉じないと信じられ、修行僧の不眠精進を戒める象徴であることから、達磨大師の「眠らず九年」の伝承と結び付き、無睡の観念が具象化した作例と解される。
不詳
目目連もくもくれん
住居・器物伝統鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』に描かれる妖怪。荒れた家の障子一面に無数の目が現れ、じっと見返すとされる。石燕の画図では碁打ちの念が碁盤から家全体に及んだ旨が添えられ、障子という住居要素に宿る怪として示される。後世の妖怪事典でも創作色が指摘されるが、障子の文様や薄明かりが与える不気味さを象徴する存在として広く知られる。
不詳
麦殿大明神むぎどのだいみょうじん
神霊・神格伝統麦殿大明神は、江戸時代に流行した麻疹を退散させる守護神として崇められ、麻疹絵に多く描かれた神格。麻疹を象徴する鬼を踏み伏せる姿が定型で、護符として家内に掲げられた。病除けの祈願とともに、養生法や食禁を添えた版画が流布し、恐れの対象である麻疹に対し心の拠り所を与えた。特定の社寺や系譜は不詳で、版元ごとに表現が異なる。
江戸
山本五郎左衛門やまもとごろうざえもん
山野の怪伝統江戸中期の怪異譚『稲生物怪録』に登場する、妖怪どもを率いる頭領。寛延二年、三次の稲生平太郎に三十日にわたり怪を仕掛け、最後に四十歳ほどの武士姿で名乗った。自らを天狗や狐ではないと述べ、魔王の座を賭けた試みの一環として平太郎を試したという。諸本で名表記に揺れがあり、絵画では三眼の烏天狗風に描かれる例もあるが、その正体は定まらない。
備後国三次(現・広島県三次市)
ろくろ首ろくろくび
人妖・半人半妖伝統人の姿をとり、夜分に首が異様に伸びる、あるいは胴から離れて飛ぶとされる怪異。多くは女性に結び付けられ、寝入った時に発現すると語られる。古典の怪談・随筆・絵巻に頻出し、抜け首型と伸び首型に大別される。実見譚には病や業因によるものとの解釈も見られ、怪奇趣味の創作性を指摘する記述も多い。
全国
龍女りゅうじょ
水の怪伝統龍女は水域に縁ある龍が女性の姿をとった存在とされ、川や湖、海辺、湧水などに現れるという。しばしば美貌の女として人前に現れ、人に恩を施す場合と畏れを抱かせる場合がある。天候や水量と関わり、祈雨・止雨の願いの対象となる説も見られる。姿は人と龍を行き来するとされ、正体は鱗や爪、香気などで察せられると語られる。
不詳
紙舞かみまい
住居・器物伝統紙舞は、紙片が自ずと舞い上がり一枚ずつ宙を漂う現象として語られる妖怪名。昭和初期の藤沢衛彦『妖怪画談全集 日本篇 上』で神無月に現れると記され、挿絵には『稲生物怪録』における鼻紙の怪異が用いられた。後年の解説書で固有名の妖怪と紹介されるが、村上健司は固有の実体より怪談中の一事象として位置づけている。
不詳
精霊風しょうろうかぜ
天候・災異伝統精霊風は、盆の十六日の朝に吹くとされる不吉の風。実体はなく、当たると急な発熱や悪寒、ふらつきなどの災厄を招くと畏れられた。ここでいう「精霊」は仏教でいう死者の霊(しょうろう)の意で、盆に帰る霊を運ぶ風と解される。五島ではこの日、墓や墓道へ近づかない習俗があり、霊障を避ける忌みとして守られてきた。
長崎県・五島地方
水虎様すいこさま
神霊・神格伝統水虎様(正式には水虎大明神)は、青森県津軽地方で水難除けの神として祀られる水神。龍宮の眷属とされ、河童(当地ではメドチ)を従える上位の存在とも、河童そのものとも解釈される。小祠や堂に神像が安置され、像は河童形や弁才天形がみられる。旧暦初夏には初なりの胡瓜などを供え川へ流し、子どもの水難を避ける祈願が行われる。
青森県津軽地方(岩木山周辺)
白虎びゃっこ
動物変化伝統白虎は四神の一つとして西方を司る神獣で、白毛の猛虎として表される。陰陽五行では白と金・秋を象徴し、方位鎮護・結界の標識として信仰・図像化が進んだ。日本では古代律令期の天文・陰陽道受容とともに伝来し、キトラ古墳西壁や薬師寺金堂台座などに描かれる。星宿信仰や城郭・墓葬の方位守護と結びつき、護符・社寺装飾にも及んだ。
不詳(日本では奈良・飛鳥の古代壁画や寺院装飾に見られる)
絵馬の精えまのせい
住居・器物伝統神社仏閣に奉納される絵馬に宿るとされる精。長年の祈願や人々の念を受けて霊性を帯び、老人や美しい女の姿で現れるという。絵画の題材に応じて姿や気配を変えると語られ、夢やまどろみの折に現れて吉凶を告げたり、絵馬の扱いについて戒めを与える存在として伝わる。器物の霊だが、霊妙さは社寺の神威に連なると捉えられる。
不詳
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