天空の草原で挑んだ数々の困難…大屋根リング屋上の植栽担う山舗和徳さん「緑の価値、人とは切り離せない」
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「ススキが穂を立ててくれれば、銀色の原っぱになって見応えがあるでしょう」
山舗(やましき) 和徳さん(50)の現場は、1周2キロの大屋根リングの屋上だ。リング外周と内周の間にある傾斜面の「庭園」に植わる草花や芝生の維持管理を担う大和リース(大阪市)の現場責任者として、連日、手入れを行っている。
大屋根リングの上で、フィソステギアの苗を植える山舗さん(8月26日、大阪市此花区で)=吉野拓也撮影8月26日午前6時30分。ツバメが飛び回り、コオロギの鳴き声が響く大屋根リングで、苗を入れた台車や道具を手にした山舗さんら13人が地上12メートルのリングに上り、作業を開始した。
まず、初夏が見頃だったリナリアの 剪定(せんてい) を行った。続いて、白い花を咲かせているフィソステギアの苗を元気なものに植え替えた。
茎や葉が茶色に変色していないか確認する。大屋根リングは約4分の1が海にせり出し、強い潮風が吹き付ける。「塩害が起きていないか気を使っています」
紫色の花が咲き誇る大屋根リング(5月28日、大阪市此花区で)=渡辺恭晃撮影リングの庭園は「天空の草原」がコンセプト。約3万4200平方メートル(甲子園0・9個分)の面積に80万株が植えられ、計53種が開催期間の半年にわたって次々と見頃を迎えている。
午前9時。開場を伝える場内放送が流れる中、山舗さんは汗をぬぐった。
一息ついた後、山舗さんは再び歩きながら草花に目を配る。パビリオンの展示を楽しむ時間はないが、一日に大屋根リングを2周以上、回っている。「リングの上で起きていることはだいたいカバーしていますね」
◇横浜市出身。若い頃は、カヌーなどアウトドア活動のガイドをしていた。「日々の自然の変化をじっと観察するのが好きなんです」
31歳で造園会社に就職し、日本庭園の造形にかかわった。「植物がそこにある意味や見え方を考えるようになった」といい、樹木医の資格も取得。2016年に現在の会社に移り、大阪城公園や鶴見緑地の樹木や草花を管理してきた。
昨年8月、大屋根リングを任されることになった時は「これ以上、厳しい条件での緑化事業はないだろう」と率直に思った。
大屋根リングは傾斜があり、外側は内側より8メートル高い。斜度は平均19度でスキー場並みの急斜面だ。水はけ、暑さ対策、強風、塩害……。課題を挙げるときりがなかったが、二度とない経験を積める機会だと前向きに捉えた。「リングは万博の花形になる。この規模でやれることを楽しもう」
重量を抑えるため、土の代わりにリサイクル素材を使った軽量マットを敷き詰めた。実験では、最大風速63メートルの風圧にも耐えられることも確認済みだ。
傾斜面の対策として、マットにチューブを設置して水を自動で循環させる仕組みを作った。草花は、塩害に強いとされる種を選んだ。
◇開幕すると、想定外の出来事も起きた。
大阪管区気象台は6月27日、近畿地方が梅雨明けしたとみられると発表した。平年より22日早く、本格的な夏がやってきた。チューブを循環する水だけでは足りず、ホースで水をまいた。暑さでチューブが伸びてしまい、補修した。
害虫のヨトウムシが発生したほか、アシナガバチの巣も見つかり、駆除に追われた。ユスリカが大量に飛散する中で作業を続けた日もあった。
1年前は何もなかった大屋根リングに様々な生態系が育まれていることに充実感を覚えている。「緑の価値は、人とは切り離せないものなのかな。多様な自然に触れあうのも万博の楽しみの一つだと思います」(大槻浩之)
人気のシンボル
大屋根リングは「多様でありながら、ひとつ」という理念のもとに、建築家の藤本壮介氏が設計した。約2万7000立方メートルの木材が使われ、「最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定された。開幕前には344億円という建設費が高額だとして批判されたが、開幕後は万博のシンボルとして人気を集めている。
◇随時掲載している「EXPO人」の特別編です。大阪・関西万博を全力で駆け抜ける人たちを紹介します。
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