外郎売(ういろううり)口上全文(読みがな付き)
本記事は、アナウンサー歴36年で会得した話し方の技術を 「仕組み」として言語化したオリジナルコンテンツです。 応用すれば、あなたの話し方も変わります。「外郎売口上」
(外郎売には諸説あります。 極力併記したいと思いますが、至らない点はご容赦ください。リンクが張られているものは早口言葉解説が有ります。)
拙者親方と申すは、お立ち会いの中にご存知のお方もござりましょうが、 せっしゃおやかたともうすは、おたちあいのうちにごぞんじのおかたもござりましょうが、
お江戸を発って二十里上方、 おえどをたってにじゅうりかみがた、
相州小田原、一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへお出でなさるれば、 そうしゅうおだわら、いっしきまちをおすぎなされて、あおものちょうをのぼりへおいでなさるれば、
欄干橋虎屋藤右衛門、只今は剃髪いたして、円斎と名のりまする。 らんかんばしとらやとうえもん、ただいまはていはついたして、えんさいとなのりまする。 元朝より大晦日まで、お手に入れまする此の薬は、 がんちょうよりおおつごもりまで、おてにいれまするこのくすりは、
昔、陳の国の唐人、外郎という人、わが朝に来たり、 むかし、ちんのくにのとうじん、ういろうというひと、わがちょうにきたり、
帝へ参内の折から、此の薬を深く籠め置き、 みかどへさんだいのおりから、このくすりをふかくこめおき、
用ゆる時は一粒ずつ、冠のすき間より取り出す。 もちゆるときはいちりゅうずつ、かんむりのすきまよりとりいだす。
依って其の名を帝より「透頂香」と賜る。 よってそのなをみかどより「とうちんこう」とたまわる。
即ち文字は(には)、「透き頂く香」(頂き透く香)と書いて、とうちんこうと申す。 すなわちもじは(には)「すきいただくにおい」(いただきすくにおい)とかいて、とうちんこうともうす。
只今は此の薬、殊の外世上に広まり、ほうぼうに偽看板を出だし、 ただいまはこのくすり、ことのほかせじょうにひろまり、ほうぼうににせかんばんをいだし、
イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、いろいろに申せども、 いやおだわらの、はいだわらの、さんだわらの、すみだわらのと、いろいろにもうせども、
平仮名を以って「ういらう」と致せしは(記せしは)、親方円斎ばかり。 ひらがなをもって「ういろう」といたせしは(しるせしは)、おやかたえんさいばかり。
もしやお立ち会いの中に、熱海か塔の沢へ湯治においでなさる(なさるる)か、 もしやおたちあいのうちに、あたみかとうのさわへとうじにおいでなさる(なさるる)か、
又は伊勢参宮の折からは、必ず角違いなされまするな。 またはいせさんぐうのおりからは、かならずかどちがいなされまするな。
お上りならば右の方、お下りならば(なれば)左側、 おのぼりならばみぎのかた、おくだりならば(なれば)ひだりがわ、
八方が八つ棟、おもてが三つ棟玉堂造り、 はっぽうがやつむね、おもてがみつむねぎょくどうづくり、
破風には菊に桐のとうの御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる。 はふにはきくにきりのとうのごもんをごしゃめんあって、けいずただしきくすりでござる。
イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、 いやさいぜんよりかめいのじまんばかりもうしても、
ご存知ない方には、正身の胡椒の丸呑み、白河夜船。 ごぞんじないかたには、しょうじん(しん)のこしょうのまるのみ、しらかわよふね。
さらば一粒食べかけて、 さらばいちりゅうたべかけて、
其の気味合いをお目にかけましょう。 そのきみあいをおめにかけましょう。
先ずこの薬を、かように一粒舌の上へ(に)のせまして、腹内へ(に)納めますると、 まずこのくすりを、かようにいちりゅうしたのうえへ(に)のせまして、ふくないへ(に)おさめますると、
イヤどうも言えぬわ、胃心肺肝がすこやかに成って(なりて)、 いやどうもいえぬわ、いしんはいかんがすこやかになって(なりて)、
薫風咽喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。 くんぷうのんどよりきたり、こうちゅうびりょうをしょうずるがごとし。
魚、鳥、きのこ、麺類の食い合せ、 うお(ぎょ)、とり(ちょう)、きのこ、めんるいのくいあわせ、
其の外、万病即効あること神の如し。 そのほか、まんびょうそっこうあることかみのごとし。
さて、この薬、第一の奇妙には、 さて、このくすり、だいいちのきみょうには、
舌のまわること(が)、銭ごまがはだしで逃げる。 したのまわること(が)、ぜにごまがはだしでにげる。
ひょっと舌が廻り出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。 ひょっとしたがまわりだすと、やもたてもたまらぬじゃ。
そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわって来たわ、まわって来るわ。 そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。
あわや咽喉、さたらな舌に、かげさ歯音。 あわやのんど(のど)、さたらなぜつに、かげさしおん。
はまの二つは唇の軽重、開合さわやかに、 はまのふたつはくちびる(しん)のけいちょう、かいごうさわやかに、
あかさたな、はまやらわ、おこそとの、ほもよろを、 あかさたな、はまやらわ、おこそとの、ほもよろを、
一つへぎ、へぎに、へぎ干し、はじかみ。 ひとつへぎ、へぎに、へぎほし、はじかみ。
盆豆、盆米、盆ごぼう。 ぼんまめ、ぼんごめ、ぼんごぼう。
摘み蓼つみ豆つみ山椒、 つみたでつみまめつみさんしょう、
書写山の社僧正。 しょしゃざんのしゃそうじょう。
小米(粉米)のなま噛み、小米のなま噛み、こん小米のこなまがみ。 こごめのなまがみ、こごめのなまがみ、こんこごめのこなまがみ。
繻子ひじゅす、繻子しゅちん。 しゅすひじゅす、しゅすしゅちん。
親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親かへえ子かへえ、子かへえ親かへえ。 おやもかへえ、こもかへえ、おやかへえこかへえ、こかへえおやかへえ。
古栗の木の古切口。 ふるくりのきのふるきりぐち。
雨合羽か晩(番)合羽か。 あまがっぱかばんがっぱか。
貴様の脚絆も皮脚絆、我等の脚絆も皮脚絆。 きさまのきゃはんもかわぎゃはん、われらのきゃはんもかわぎゃはん。
しっかわ袴のしっぽころびを、三針はりながにちょと縫うて、縫うてちょとぶんだせ。 しっかわばかまのしっぽころびを、みはりはりながにちょとぬうて、ぬうてちょとぶんだせ。
かわら撫子野石竹。 かわらなでしこのせきちく(のぜきちく)。
のら如来のら如来、三のら如来、六のら如来。 のらにょらいのらにょらい、みのらにょらい、むのらにょらい。
一寸先の(一寸の)お小佛にお蹴つまずきゃるな。 ちょとさきの(いっすんの)おこぼとけにおけつまずきゃるな。
細溝にどじょにょろり。(にょろり、にょろり) ほそみぞにどじょにょろり。(にょろり、にょろり)
京の生鱈、奈良、生まな鰹、ちょと四五貫目。 きょうのなまだら、なら、なままながつお、ちょとしごかんめ。
お茶立ちょ、(茶立ちょ、)ちゃっと立ちょ、茶立ちょ、 おちゃたちょ、(ちゃたちょ)、ちゃっとたちょ、ちゃたちょ、
青竹茶せんでお茶ちゃ(っ)と立ちや(ゃ)。 あおたけ(だけ)ちゃせんでおちゃちゃ(っ)とたちや(ゃ)。
来るわ来るわ何が来る、高野の山のおこけら小僧、 くるわくるわなにがくる、こうやのやまのおこけらこぞう、
狸百匹、箸百ぜん。天目百ぱい、棒八百本。 たぬきひゃっぴき、はしひゃくぜん。てんもくひゃっぱい、ぼうはっぴゃっぽん。
武具馬具ぶぐばぐ三ぶぐばぐ、合わせて武具馬具六ぶぐばぐ。 ぶぐばぐぶぐばぐみぶぐばぐ、あわせてぶぐばぐむぶぐばぐ。
菊栗きくくり三きくくり。合わせて菊栗六きくくり。 きくくり(ぐり)きくくり(ぐり)みきくくり(ぐり)。あわせてきくくり(ぐり)むきくくり(ぐり)。
麦ごみむぎごみ三むぎごみ、合わせて麦ごみ六むぎごみ。 むぎごみむぎごみみむぎごみ、あわせてむぎごみむむぎごみ。
あのなげしの長薙刀は誰が長薙刀ぞ。 あのなげしのながなぎなたはたがながなぎなたぞ。
向こうのごまがらは荏の胡麻殻か真胡麻殻か、あれこそほんの真胡麻殻。 むこうのごまがらはえのごまがらかまごまがらか、あれこそほんのまごまがら。
がらぴいがらぴい風車。 がらぴいがらぴいかざぐるま。
おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼうし、ゆんべもこぼして、又こぼした。 おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼうし、ゆんべもこぼして、またこぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ。 たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ。
たっぽたっぽ、一丁だこ(干だこ)、落ちたら煮て食お。 たっぽたっぽ、いっちょうだこ(ひいだこ)、おちたらにてくお。
煮ても焼いても食われぬものは、 にてもやいてもくわれぬものは、
五徳、鉄きゅう、金熊どうじに、石熊、石持、虎熊、虎ぎす(きす)。 ごとく、てっきゅう、かなくま(ぐま)どうじに、いしくま(ぐま)、いしもち、とらくま(ぐま)、とらぎす(きす)。
中にも東寺の羅生門には、茨木童子が、うで栗五合、つかんでおむしゃる。 なかにもとうじのらしょうもんには、いばらぎどうじが、うでぐりごんごう、つかんでおむしゃる。
かの頼光の膝元去らず。 かのらいこうのひざもとさらず。
鮒、きんかん、椎茸、定めてごたんな、そば切り、そうめん、うどんか愚鈍な小新発知。 ふな、きんかん、しいたけ、さだめてごたんな、そばきり、そうめん、うどんかぐどんなこしんぼち。
小棚のこ下の小桶に、小味噌がこあるぞ、小杓子こもって、こすくってこよこせ。 こだなのこしたのこおけに、こみそがこあるぞ、こしゃくしこもって、こすくってこよこせ。
おっと合点だ、心得たんぼの、 おっとがてんだ、こころえたんぼの、
川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は走って行けば、やいとを摺りむく。 かわさき、かながわ、ほどがや、とつかははしっていけば、やいとをすりむく。
三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、 さんりばかりか、ふじさわ、ひらつか、おおいそがしや、
小磯の宿を七つ起きして、早天そうそう、相州小田原透頂香。 こいそのしゅくをななつおきして、そうてんそうそう、そうしゅうおだわらとうちんこう。
隠れござらぬ、貴賎群衆の花のお江戸の花ういらう。 かくれござらぬ、きせんぐんじゅ(じゅう)のはなのおえどのはなういろう。
あれあの花を見て、お心をお和らぎやという。 あれあのはなをみて、おこころをおやわらぎやという。
産子這子に至るまで、このういらうのご評判、 うぶこはうこにいたるまで、このういろうのごひょうばん、
ご存知ないとは申されまいまいつぶり、角出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、 ごぞんじないとはもうされまいまいつぶり、つのだせ、ぼうだせ、ぼうぼうまゆに、
うす、杵、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらと、 うす、きね、すりばち、ばちばちがらがらと、
羽目を外して今日おいでの何れも様に、 はめをはずしてこんにちおいでのいずれもさまに、
上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、 あげねばならぬ、うらねばならぬと、いきせいひっぱり、
東方世界の薬の元締、薬師如来も照覧あれと、ホホ、敬って、 とうほうせかいのくすりのもとじめ、やくしにょらいもしょうらんあれと、ほほ、うやまって、
ういらうはいらっしゃりませぬか。 ういろうはいらっしゃりませぬか。
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