. “日本より進んでいる”は本当?──ヨーロッパが直面する「ジェンダー」の壁 理想と現実のはざまで
“日本より進んでいる”は本当?──ヨーロッパが直面する「ジェンダー」の壁 理想と現実のはざまで
“日本より進んでいる”は本当?──ヨーロッパが直面する「ジェンダー」の壁 理想と現実のはざまで

“日本より進んでいる”は本当?──ヨーロッパが直面する「ジェンダー」の壁 理想と現実のはざまで

国際“日本より進んでいる”は本当?──ヨーロッパが直面する「ジェンダー」の壁 理想と現実のはざまで2025年12月31日 14:00

“ヨーロッパは「ジェンダー先進の地」”…そんな思い込みが揺らぎ始めています。家族観、働き方、政治対立、そして企業文化。制度は整っていても意識が追いつかない国もあれば、逆に長年、停滞してきた分野で大改革に踏み切る国もあります。ヨーロッパは今、「変われない」と「変わり始めた」現場が交錯する入り組んだ局面にあります。理想と現実のはざまで模索する、ヨーロッパ社会の今を追いました。(NNNロンドン支局 鈴木あづさ)

■「ジェンダー先進の地」の常識が揺らぎ始めた

ヨーロッパは日本よりジェンダー施策が進んでいる──そんな“常識”は、今なお妥当なのでしょうか。実はヨーロッパでも、家族観や働き方、政治の対立がからまり、改革が思うように進んでいない国は少なくありません。しかし同時に、一部の国では停滞していた分野がようやく動き始めています。まず浮き彫りになるのは、「企業のトップ層は変わったが、中間層が変わらない」という現実です。フランスでは女性取締役の比率が法定目標の40%をすでに上回り、主要企業では取締役の約半数が女性という水準に達しています。ノルウェーは2003年に“クオータ制”を導入し、企業の取締役会に40%以上の女性登用を義務づけてきました。一方で、重要な管理職や部長級には男性が多いまま。「ガラスの天井は割れたが、壁が残っている」と言われるゆえんです。

■ヨーロッパ各国の家族政策 「理想」と「現実」

次に見えてくるのは、家族政策が抱える“理想と現実”のギャップです。たとえばドイツ。東西分断が終了してから35年がたった今も、母親の働き方には大きな差が残ります。旧東ドイツは社会主義の影響から「母親も働くのが当たり前」。一方、旧西ドイツは「母は家庭」という伝統観が根強く、その違いは再統一した後も完全には消えませんでした。東側では出産から1年前後で職場復帰する母親が多く、西側では最長3年まで育児休業を取るという意識が根強い──こうした違いが、今も就業統計や意識調査に表れています。深刻さが際立つのはイギリスです。子どもを保育施設に預ける際の保育費の負担が非常に重く、OECD(=経済協力開発機構)諸国の中でも特に高い水準にあります。OECDの2022年の試算では、典型的な共働き世帯の場合、世帯所得の約2割前後が保育費にかかるとされています。条件によっては3~4割が保育費に消える家庭もあるとされています。これは、OECDの平均である約10%を大きく上回る水準です。政府は無料保育を拡大していますが、現場の担い手が追いつかず、改善には時間がかかる見通しです。一方、フランスは大きく舵(かじ)を切りました。2027年までに60億ユーロ(約1兆900億円)を投じて保育を拡充し、2030年までに20万枠を新設する計画です。子どもの「最初の1000日」を重視して家族支援を手厚くする方針で、出生率低下への強い危機感が背景にあります。北欧スウェーデンは育休制度が世界トップクラスで、男女が480日の育児休暇を分け合える仕組みがあります。「父親が育休を取らないと逆に恥ずかしい」と言われるほど文化が変わりましたが…男性が取得可能な日数のうち、実際に取得する日数は3割程度で頭打ち。収入が低い父親や非正規労働者は休みを取りづらく、制度の恩恵を受けられない格差が生まれています。育休の大部分は依然として母親が担い、賃金格差・昇進格差は解消しきれていません。そして、ジェンダー議論を語るうえで欠かせないのが、政治の揺り戻しです。スペイン、イタリア、フランスでは右派政党が「伝統的家族」を前面に掲げ、ジェンダー政策に反対する動きを強めています。「ジェンダーは政治の争点だ」と明確に語る政党もあり、選挙のたびに社会の分断が浮かび上がります。

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